2010年、スイスの金融大手UBSが従業員に定めるドレスコードが流出し、詳細すぎるとして冷笑や非難を浴びた。しかしヒューレットはこれを擁護し、幹部を目指す人材にとってこうしたガイドラインは有益であるという。なぜだろうか。

 

 スイスに本拠を置く金融大手UBSは、ネットで叩かれ、メディアに茶化されたあげく、従業員用ドレスコードを撤回した。洗練された本物のプロらしく見せるための身だしなみについて、同社は43ページにもわたるマニュアルを用いていた。身だしなみのガイダンスを大いに必要としている大勢の前途有望な新人たちは、これから何に頼ればいいのだろう?

「ファンデーション、マスカラ、そして薄い色の口紅を使った控え目なメイクは、あなたの個性を引き立てます」
「ニンニクやタマネギの入った料理は避けましょう」

 2010年12月に『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙が、ヒールの高さから髪の色までを事細かに指示したUBSのドレスコードの一部を紹介するや、世間は騒ぎ始めた。上品なマニキュアが乾くよりも早く、『ハフィントン・ポスト』紙とMSNBCもこれに続き、USBのマイクロマネジメントを面白おかしく書き立てた。ロンドンのタブロイド紙『デイリー・メール』は、UBSが「金融街からセクシーさを排除しようとしている」と皮肉った。

 UBSは、細部にこだわりすぎたのかもしれない。しかし、センター・フォー・ワーク・ライフ・ポリシー(CWLP)の新たな調査によれば、ドレスコードの主な対象者――同行の店舗で窓口に座るスタッフで、その多くが銀行業務に不慣れな派遣社員たち――は、そういった助言を切に必要としていたと思われるのだ。赤いランジェリーや毛根付近の白髪、無精ひげに対するしつこいほどの言及に、感謝さえしていただろう。CWLPのアンケート回答者(米国の大企業で働く大卒男女1000人余り)は、「エグゼクティブ・プレゼンス」(エグゼクティブにふさわしい振る舞いや存在感)を左右するのはまさにこうした点であると指摘している。

 特に女性は、成功するためには、役割にふさわしい身だしなみが不可欠だと考えていた。野心的な女性管理職はきわめて地味な装いでなくてはならない、と考える女性は、回答者の53%にのぼった。けばけばしいメイクは避ける、胸元は開けすぎない、短すぎ・タイトすぎなスカートは履かない、爪は伸ばしすぎない――彼女らが気をつけているのはまさに、UBSのドレスコードにおける禁止事項のようなものだ。

 実際、回答した女性の半数、そして男性の37%は、身だしなみとエグゼクティブ・プレゼンスは本質的に関連していると考えていた。リーダーらしく見えないとしたら、リーダーの役割を与えられるチャンスも減るということを理解していたのだ。外見は個人的な問題ではなく、スマートな装いであると周囲から見なされれば、本物のリーダーに必要な資質である自信が生まれる――彼らはそう認識していた。