最近の円安は輸出企業の売上高と利益を押し上げている。この増収・増益には、輸出増に基づくリアルな部分と、現地生産・現地販売の在外子会社の財務諸表の換算による部分とがある。トヨタ自動車の2014年3月期第1四半期の財務諸表を題材に、リアルな部分と換算の部分を試算する。

 

やはり円安は輸出企業にとってプラス

 ちょうど1年くらい前まで、日本企業は六重苦に直面しているといわれていた。いわく、(1) 円高、(2) 高い法人税率、(3) 自由貿易協定への対応の遅れ、(4) 製造業の派遣禁止などの労働規制、(5) 環境規制の強化、(6) 電力不足の6つである。

 これらの問題の中には、一部改善されたもの、かえって悪化しているもの、当時と変わらないものがあるが、大幅に「改善」されたものとして円高が挙げられる。もっとも、東日本大震災以後の原発停止にともない、多額の燃料輸入によって貿易赤字に転落している日本全体にとって、円安が本当に「改善」なのかどうかについてはじっくり考える必要がある。実際、2013年7月の統計(速報)では、輸出は、自動車、有機化合物等が増加し、対前年同月比で12.2%の増加、輸入は、原粗油、液化天然ガス等が増加し、19.6%の増加で、差し引き1兆240億円の貿易赤字である。

 しかし、輸入のコストが上昇しても、その一部は企業努力によって吸収され、それがすぐに国内価格の上昇につながるとはかぎらない。それに対して、輸出品の価格競争力はすぐに高まる。したがって、円安は輸出産業にとっては環境改善といっていい。

 一例として、トヨタ自動車の2014年3月期第1四半期の決算発表資料を見てみよう。連結決算の要約は次のとおりである。

 四半期の決算なので4月から6月の3ヵ月分の数字である。売上高は、6兆2553億円で、前年同期の5兆5015億円から13.7パーセントの増加である。これに対して、営業利益は6633億円と前年同期の3531億円から87.9パーセントも増加している。当期純利益では、5621億円と、前年同期の2903億円からほぼ倍増の93.6パーセント増を達成した。前年同期の為替レートはドル円が80円、ユーロ円が103円だったのに対し、当四半期はドル円が99円、ユーロ円が129円と大幅な円安になっている。やはり、円安は輸出企業に大きくプラスのようである。