ジム・ステンゲル氏の連載第2回目では、今年のカンヌの変化について語っていただきます。対談の後半ではメインテーマでもあるCMOの役割やデータとどう付き合うかなど、いま知りたいトピックスが満載です。
Jim Stengel Company代表取締役CEOのジム・ステンゲルへのインタビュー第2回。60周年を迎えたカンヌライオンズの変化や、CMOの責任について話が広がっていく。
カンヌは時代の変化を体現
川名:カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル(以下カンヌ)は今年60周年を迎えましたが、何か大きな違いといったようなものをジムさんは感じましたか?
ステンゲル:私が初めて参加した10年前は、まだ規模も小さく、テレビの広告が主体でした。この10年間を振り返ると、カンヌは環境の変化をきちんと体現してきていると思います。たとえば、「イフェクティブネス部門」「チタニウム部門」「デザイン部門」といった賞が新たに創設されたこともそうですね。
また、テクノロジーメディアの企業が多数参加するようになり、存在感が非常に大きくなってきました。グーグルを筆頭に、マイクロソフト、ツイッター、ヤフー、AOLといった企業が、カンヌでいわば“主役を張っている”ことも、今の時代を象徴していると思います。この10年で、クリエイティビティにテクノロジーが加わりましたね。ただ、何といっても1番革新的なことは、クリエイティビティとストーリーテリングでしょう。テクノロジーは、クリエイティブなストーリーテリングを可能にする強力なツールですね。
川名:今年のカンヌで特に印象に残ったことは何ですか?
ステンゲル:「CMOアクセラレータ・プログラム」の「ビハインド・ザ・シーンズ」に登場してくれたワイデンケネディの話ですね。基本的にCMOはCTOでなければならないと語っていました。Tは、「Truth(真実)」で、代理店に示すブリーフィング(注1)をどうか正直に行ってほしい、そうすればいい仕事ができるということです。
たとえばクライスラーは製品をはじめ多数の問題をかかえていましたが、正直なブリーフィングをしなかったために、代理店は適切な対応をとることができませんでした。好対照だったのは、スティーブ・ジョブズが1997年にアップルに戻ってきたときのことです。ジョブズは、製品パイプラインやイノベーションがからっぽだという状態を代理店に正直に伝え、再び消費者とつながりを持ちたいのでレリバンシーについてアドバイスを求めました。その結果、例の「シンク・ディフェレント」キャンペーンが生まれ、アップルは時代が求める製品を生み出したわけです。
川名:代理店と企業は正直なパートナーシップを深めていかなければならないということですね。