人材活用において、「情熱」という明確に測定しにくい要素をどう考えるべきだろうか。筆者らによれば、情熱は間違いなく人材に問うべき「資質」であるという。
いまや世界中の誰もが、血眼になって優秀な人材を探している。ハリウッド、スポーツ界、幹部人材斡旋会社、企業の人事部――皆が一様に、天賦の資質と優れた精神を併せ持ち卓越したパフォーマンスを発揮する人材を探している。数カ月前にダグラス・コナンは、才能豊かな人材の探し方についてHBR.ORGに素晴らしいブログを寄せている。それによると、志願者を評価する際には3つの要素――能力、人柄、チームワークのスキル――に優れているかどうか見極めることが必要であるという。そのような人材を見つける方法についてコナンは有益な助言を与えているが、ここにはある重要な要素が欠けている。
その要素とは――コナンの3つの資質と同じくらい重要であるが――仕事への情熱である。心理学者が言うところの「内発的動機」だ。これがなければ、どんなに豊かな才能を備えていても優れたパフォーマンスを発揮することはできない。我々は35年間にわたり、モチベーションが創造性にどう影響するかを調査してきた。多岐にわたる人々(子ども、大学生、プロの芸術家、知識労働者)を対象とした研究から明らかになったのは、人々は強い内発的動機を持った時に、より創造性を発揮するということだ。つまり、取り組んでいる仕事への興味、楽しみ、満足、個人的なやりがいが原動力となって生まれる意欲である。
ノーベル物理学賞受賞者のアーサー・ショーローは、このことを的確に表現している。「その仕事が好きだから奉仕する、という姿勢は重要である。成功する科学者は往々にして、最も優れた才能の持ち主ではなく、好奇心に突き動かされている者である。彼らは謎を解明せずにはいられないのだ」
内発的動機を持っている人は仕事に深く関与するため、より高次の創造性を発揮する。たとえば、あるマーケティング上の重要な問題があるとしよう。それを解決する作業は、迷路の出口を見つけるようなものだ。仕事で生じる問題には通常、複数の解決策、つまり迷路からの複数の出口がある。そしてたいていの場合、出口へとまっすぐに伸びる非常にわかりやすい道筋が1つある。それは、ほとんどの人が選択する一般的な解決策だ。
外発的動機――迫り来る期限、厳しい評価への恐れなど――を持つ人は、この安全な道を選ぶであろう。そして迷路からは出られるが、その解決策は凡庸であるため物事を前進させることはない。しかし内発的動機を持つ人は違う。より面白いものを求めて迷路を探求し、創意に富む解決策を見つけるのだ。
マネジャーは、情熱と創造性の結びつきが生む効果を活用するために、以下の3つのガイドラインを参考にするとよい。
1.採用する際に、能力と同じくらい情熱を重要視する
人材に情熱を求めなければ、雇った社員は十分な意欲を持たず、高い創造性と生産性を発揮しないかもしれない。コナンが指摘するように、重要な役職の候補者についてはじっくりと時間をかけて、可能な限り入念に知る必要がある。面接では、なぜいまの仕事を選び従事しているのか、仕事で失望した経験は何か、理想の仕事は何かを尋ねよう。仕事について語る候補者の目が情熱で輝いているかを確かめ、新しいことに挑戦する強い意欲を聞き出すのだ。また、候補者の推薦者と話す時にも、情熱に関する言及に留意するべきである。