「リアルタイムマーケティング」の時代へ
ソーシャルメディアの普及により、生活者がメディア化し、自ら情報を発信しそれが拡散するようになっています。
それに伴い、人々のコミュニケーションの構造も劇的に変化しています。膨大な情報量が氾濫する中、生活者は自分にとって価値がある、興味がもてる情報のみ選別し、またそれを他人と共有(シェア)していくようになりました。そして、それが彼らの購買行動にも大きな影響力を持つようになっています。
一方で、大量の情報が高速で流通する中、生活者の関心や世の中のトレンドは目まぐるしく移り変わっています。生活者の心をつかみ、行動を喚起するのは以前よりも難しくなっているのです。
そうした中、企業にはタイミング(トレンドや生活者の関心の高まり)をとらえて即時に戦略を立て、即時に実施する「リアルタイムマーケティング」が求められています。
米国ニューヨークに本社を持つ、電通のグループ会社である360i 社が手掛けた事例を紹介します。SNSを活用したオレオ社の「You Can Still Dunk In The Dark」コミュニケーションはリアルタイムマーケティングの先進事例です。これは、2013年の2月、アメリカスポーツの最大イベント「スーパーボウル (Super Bowl)」に合わせて実施されました。
スーパーボウルは全米中が注目する最大級のイベントで、毎年、広告主が莫大な金額を投下してテレビCMを流すことで有名です。ソーシャルメディアを活用した取り組みが各社行われており、リアルタイム性を重視して試合結果に合わせたコンテンツを制作していた広告主も少なくありません。
そうした中、最も成功を収めたのは、クッキーのオレオでした。それは、試合中の停電という突発的な事象に瞬時に対応し、その場で素晴らしいコンテンツを作り上げ、フェイスブックやツイッターに瞬時に投稿しました。その結果、ツイッターでは15,000回以上もリツイート、フェイスブックでは、20,000以上もの「いいね!」を獲得するに至りました。
これを可能にしたのは、広告主のリアルタイムマーケティングへの理解、チームの知識と経験、それを実現するための組織体制と言っていいでしょう。
この前年、オレオは生誕100周年を記念して、フェイスブック上で「Daily Twist Campaign」というキャンペーンを100日間に渡って実施しました。これは、世の中のトレンドに合わせたコンテンツを100日間、毎日制作し投稿するという試みです。
このキャンペーンに際し、360iをはじめとするソーシャルメディア運用メンバーがチームとなり、広告主も含めた会議を毎朝行い、その場で方針を決め、コンテンツを制作し、投稿するという取り組みを100日間、毎日続けたのです。
この時の経験値と体制作りがあったからこそ、スーパーボウルの時の不測の事態にも瞬時に対応できるリアルタイムマーケティングが可能だったのです。