本誌2013年11月号(10月10日発売)の特集は、「競争優位は持続するか」。HBR.ORGの関連記事の第3回は、「環境優位」の第一人者であるアンドリュー・ウィンストンを取り上げる。環境への取り組みを通して競争優位を確立せよ、と提唱する筆者は、ゼロックスの取り組みを通してその必要性を検証する。
「グリーン」なビジネス戦略について私が話すと、誰かが必ず尋ねる。持続可能性の追求は、企業の最善の利益とはならないのではないか、と。もっともな質問ではあるが、残念ながら、この質問は大きな誤解に基づいている。常に変化している世界で企業をどう運営すべきかを、正しく理解していないのだ。
具体的な例を示そう。ゼロックスは(他のプリンタメーカーも同様だが)、顧客のプリント枚数の削減に協力している。急成長中の「マネージド・プリント・サービス」(顧客企業における出力環境を最適化するために、すべての印刷関連業務を請け負うサービス)を行う企業として、顧客に使用するプリンタの数を減らす方法を教える。顧客は紙やエネルギーを節約でき、ゴミも減らせて、環境への負荷とコストを削減することができる。
私から見ればこれは明らかに、顧客によりよいサービスを提供している例である。しかし最近、ある企業の幹部がこう尋ねてきた。「そうやってグリーンな目標を追求していたら、ゼロックスの利益や雇用は減るのではないですか?」
この質問にはいくつか答えがある。まず、私がゼロックスCEOのアーシュラ・バーンズに同様の質問をした時に返ってきた答えを紹介しよう。「そうかもしれません。でも、他社にそうされたら、もっと大変なことになります」。ゼロックスがグリーンで顧客に優しいソリューションを提供しなくとも他社がやる。つまり社内から自発的にイノベーションを進めるのではなく、外部から食われてしまう、ということだ。だが最近、もう1つの答えが見えてきた。それは、持続可能性をビジネスの文脈のなかで理解するうえで、非常に重要となる。
私たちの多くは、「いつも通りのやり方」について危険な誤解を(おそらく、認知バイアスも)持っている。つまり、そうしたものが存在すると思い込んでいるのだ。ビジネスにおいても、個人の生活に関しても、変化について考える時には「いつも通り」という状態があることが前提になっている。物事が現状のままである世界と、変化とを対比するのだ。