アメリカでは、ダイバーシティはマネジメントにおける重要な課題だ。今回は、CWLPがアジア系の専門職に対して実施した調査結果を報告する。アジア系人材がリーダーシップを発揮する機会は、偏見や文化的差異によって阻まれているという。ガラスの天井ならぬ「竹の天井」だ。


 アメリカの企業のトップには、なぜもっと多くのアジア人がいないのだろう?

 本来なら、もっといるべきなのだ。高等教育を受け、トップレベルの大学や大学院を卒業したアジア人の割合は、他の人種よりも高い。彼らはまた、野心にあふれている。センター・フォー・ワーク・ライフ・ポリシー(CWLP)の新たな調査によれば、アジア人の64%がトップの地位を目指しているのに対して、白人では52%にすぎない。

 しかし「マイノリティのモデル」と呼ばれるほどの輝かしい実績にもかかわらず、最高幹部の地位を得ているアジア人は少ない。彼らはアメリカの人口の5%を占めているが、フォーチュン500社のCEOはわずか1.8%、役員は2%にすぎない(2004~2010年)。さらに悪いことに、彼らはこの不自然さに気づいていて、快く思っていない。

 ガラスの天井ならぬ「竹の天井」を生み、助長している要因は何なのだろうか?

 CWLPが3000人のアジア系男女に対して調査を行ったところ、回答者の25%が、職場で偏見に直面していると感じていた(2005年のギャラップの調査では、31%にも及んでいた)。専門職に就くアジア人は、露骨な差別ではなく、居心地の悪さを感じさせる暗黙の不公平を被っている。たとえばあるチームでは、定期ミーティングを開くレストランには決まってステーキハウスが選ばれる。中国人のシニア・マネジャーがたまには中華料理やインド料理の店を試そうと提案しても、受け入れられないという。また、CWLPの調査に回答したアジア系男性の37%は、同僚が彼らのプライベートについて質問するのを避けていると感じていた。この数字は、白人やヒスパニック系の2倍で、アフリカ系アメリカ人よりも14%高い。

 回答者の48%は、職場に浸透しているリーダーシップ・モデルに従うことに問題を抱えていると答えた。あるマネジャーが例えたように、彼らは自分たちが「丸い穴に打たれた四角い釘」、つまり場違いであるという感覚を共有している。たとえば、ある大手多国籍企業の副社長である英印混血の女性は、英語のアクセントが「あまりに堅苦しい」と、上司から非難された。傷つき混乱した彼女は尋ねた。「どうしろとおっしゃるのでしょうか。語学学校にでも通えばいいのですか?」

 文化に根差した落とし穴もある。アジア人のコミュニケーションや人脈づくりのスタイルは、自己主張や率直さを重んじるアメリカ流とは相容れないものだ。アジア人は控え目すぎるとよく批判される。他の文化に比べると、会議で新しいアイデアを提案したり、上司に自分を売り込んだりすることは少ない。そして、権威には服従するという文化的習慣が根強い。調査では、アメリカのビジネス界で重んじられる「大胆不敵」なリーダーシップを発揮するどころか、コンセンサスに挑戦することさえ、他の人種グループに比べればきわめて少ないことがわかった。