本誌2013年12月号(11月9日発売)の特集は「理想の会社」。企業文化の価値、新たな雇用関係、助け合いの促進など、「よい会社」のあり方に多角的にスポットを当てる。HBR.ORGの関連記事第2回は、部下の感情を効果的にケアする方法について。不安や挫折を経験している相手には、直接的ではなく暗黙のうちに支援を提供するほうが、大きな効果をもたらすという。


 部下が感情をコントロールできるよう手を差し伸べることは、リーダーシップの重要なスキルである。とくに困難な状況下では、その能力が問われる。あなたの言い方ひとつで、相手のネガティブな感情がうまく和らぐかもしれないし、ポジティブな感情が促進されるかも知れない。また、仲間意識や信頼感、チームワークが高まるかもしれない。

 他者による感情制御に関する最近の研究によると、どのようにサポートするかが大きな違いを生むという。思いやりの言動を間接的に、暗黙のうちに示すほうが、直接的かつ明示的に示す場合よりも、より大きなプラスの効果をもたらすことが判明した。言い換えると、人は思いやりの行為を示されたことに気づかないほうが、その行為からより多くを得るということだ(私はこれらの研究成果を、2012年10月にニューヨークで開かれたニューロリーダーシップ・サミットで発表した)。

 暗黙の思いやりは、何気なく示される場合が多い。一方で明示的な思いやりは、相手の感情を制御してその効果を観察しよう、という意図の下に示される。したがって暗黙の感情制御には、たとえば「カメレオン効果」が含まれる。これは、会話している相手のしぐさや口調を無意識のうちに真似したり、周囲のグループの意見に無意識に反応を返したりするようなことを指す。反対に、明示的な感情制御を行うのは、メッセージをどう伝えるかを慎重に考慮し、中立的または肯定的な言葉を使って、厳しくも建設的なフィードバックをする時、あるいは挫折を経験している相手に手助けや助言を与える時である。説得したい相手の口調やしぐさを(無意識にではなく)意識して真似るのも、明示的な感情制御である。

 明示的な感情制御についてのある研究では、フィードバックを間接的に与えられた場合と、より強硬に面と向かって与えられた場合の違いが明らかになっている。私の同僚でコロンビア大学教授のニール・ボルガーの研究では、間接的・暗黙的に与えられた思いやりやサポートは、直接的・明示的なサポートよりも大きなプラスの影響があることが示された。

 暗黙のサポートは、それを受ける人にとっては目に見えないもので、サポートを提供している側の行為は気づかれない。たとえば、同僚や部下に対して間接的にアドバイスを与える場合、「君は問題なくやっている」という言葉を添える。あるいは、自分があなたの立場だったら助けが必要かもしれない、という言い方でもよい。そして、自分だったらどうするかを「声に出して考える」ことで、相手に伝える。これとは対照的に、マネジャーが「さあ、助けに来たぞ」という姿勢を明らかにしたり、「どうやって対処するか、教えてあげよう」と言って先手を取ったりすると、部下の自尊心や自主性を脅かすことになる。彼らのパフォーマンスがマイナスに評価されている、と強調することになるからだ。