「自分自身がしてもらいたいことを、相手に対しても行ないなさい」。このシンプルなルールに従って行動すれば企業の評判はよくなり、ルールに反する度に評判は消え去っていく――。昔ながらの黄金律を、現代の企業経営に落とし込むのがネット・プロモーター・システムである。好評連載、第7回。
MBAの授業や会社の会議では、ミッション、倫理的な行動や高い志を持つ必要性について大いに議論されているだろう。そしてアニュアルレポートに記載されているほとんどの「企業理念(コアバリュー)」から判断すると、多くのビジネスリーダーが顧客と従業員の生活を豊かにすることで成長したいと考えているようだ。

(Fred Reichheld)
ベイン・アンド・カンパニー フェロー
顧客、従業員、パートナーのロイヤルティ改善を通したクライアント企業の業績向上を中心に、コンサルティング業務と調査に携わってきた。米『コンサルティングマガジン』誌(2003年6月号)で、世界で最も影響力のあるコンサルタント25名に選出された。最近の著書に、ロブ・マーキーと共著した『ネット・プロモーター経営』がある。
しかしながら、現実のビジネスの世界ではこれらは軽んじられているようだ。財務会計のシステムは、四半期毎の利益には報いるものの、倫理的な行動に大きな価値を置かない。企業にまつわる定性的な評価を扱う会計ルール――のれんや無形資産――もきりがないほど頻繁にルール変更されている。
会計士たちは、単に基本的な考え方を複雑化しているだけかもしれない。企業の評判は、シンプルな昔からの黄金律によって獲得される:自分自身がしてもらいたいことを相手に対しても行ないなさい。この黄金律に従って行動する度に、あなたの企業の評判はどんどん良くなっていくし、反対にこのルールに反する度に評判は消え去っていくだろう。そして長期的な財務的成功――売上、利益、キャッシュフローの数値――は、企業の評判の得点表と見事に一致する。
我々誰もが、多かれ少なかれ、他人から敬意を払って応対してもらうことで心地よくなりたいと願っている。そのような体験は我々を幸せな気持ちにするだけでなく、自分の大切な人にもその体験を共有したいと考えるようになる。経験を推奨するということは、友人も同じような対応を受けさせてもらえるだろうという信頼の証である。推奨行動は、顧客がその企業との関係をどのように考えているかの示唆でもある。顧客が、熱心に友人に薦めるほど素晴らしい経験だったと感じる時、彼らは推奨者となる。逆に、非常に悪い体験をしてその企業を避けるように注意を促す時、批判者となる。両者とも直接的で測定可能な経済的結果をもたらす。
これは、同僚のロブ・マーキーと私が先月出版した本で説明している ネット・プロモーター・システムのコンセプトの中核を成す。ネット・プロモーター・システムは、より多く購入し、より長く顧客であり続け、友人を紹介し、役に立つフィードバックやアイデアも提供してくれる推奨者を創出することに組織全体を注力させる。また、コストのかかる批判者の数も最小限に抑える。我々が最近実施した調査プロジェクトによると、幅広い業界においてネット・プロモーター・スコア(NPS)が高い企業は平均して競合よりも2倍早いスピードで成長を遂げる。