日本が新興国進出で苦労しているのは、かつての欧米型の進出での成功体験が通用しないからではないか。最新号のテーマは新興国進出。ここではグローバル化で成功しているスターバックスとユニ・チャームを比較する。
バンコクのスターバックスで勉強する大学生
年末の休暇を利用してタイに行ってきました。首都バンコクではデモに合わずに済みました。
タイの通貨バーツは「円」の3分の1程度のレートです。タクシーの初乗りは35バーツ(約100円)で、市内は100バーツでほぼ回ることができます。コンビニで売られているお弁当は40バーツ(約120円)。この国では100バーツを稼ぐのは大変なことなんだと実感します。
バンコク市内の大学の近くにスターバックスがありました。店舗に入るとその雰囲気は日本やアメリカのスターバックスと何ら違和感なく、同じ世界観を見事に作り上げています。店員さんの対応も同じで、フレンドリーに話しかけるいつものサービスを受けました。注文したラテの味も日本で味わうものと見事に同じで、タイにいながら日常的な空間と時間を過ごすことができました。
これがグローバルブランドのひとつのモデルでしょう。世界のどこででも同じブランド体験を提供する。スタバはアメリカでも日本でもタイでも、スタバであって、国の文化を超えた世界観を提供してくれます。
さて、このラテの値段は100バーツでした。日本円で300円ですが、購買力平価を見るとタイは日本の4分の1程度でしたので、日本人の消費感覚でいうと100バーツは1200円ということになります。「1200円でスタバのラテを飲む」というのは、大衆的な金銭感覚を超えています。日本では、高級ホテルのラウンジで飲むコーヒーの値段がこのくらいでしょう。バンコクのこのスタバでは、客層の中心は大学生のようで皆ラテとともにノートや本をテーブルに広げていました。この光景は日本でもおなじみですが、「1200円のコーヒーを飲みながら勉強する大学生」となると事情は違ってきます。タイの1人当たりGDPは5400ドル(約60万円)ですが、子どもを大学に送る一部の富裕層と、農村に暮らす多くの貧困層という経済格差を実感します。