グローバル市場に狙いを定めるならば、イノベーションのプロジェクトも局地的なものからグローバルな取り組みへと変えていく必要がある。世界にまたがる自社の拠点網を、プロジェクトチームとしてうまく編成・管理する3つの手法をお伝えする。本誌2014年2月号(1月10日発売)の特集、「日本企業は新興国市場で勝てるか」の関連記事、第2回。
自社のグローバルな拠点網を、イノベーションのためのネットワークとして活用できずに苦労している企業は多い。その一因は、グローバルなプロジェクトを従来型の(1つの拠点における)プロジェクトと同じやり方で管理していることだ。局地的なプロジェクトは、蓄積された知識や、共有されている暗黙知と信頼をベースにしているが、グローバル・プロジェクトではそれらをあてにできない。世界各地の拠点をまたがるイノベーションの取り組みで最大の成果を上げるためには、マネジャーには別のやり方が必要となる。
以下で、グローバルなイノベーションを成功に導くための、3つのマネジメント手法を紹介しよう。
1.上級マネジャーに監督と支援の責任を集中させる
プロジェクトの根本を成す知識基盤が分散しており、プロジェクトチームが複数の場所に散らばっていれば、誤解や対立が起きたり、重要な意思決定が滞りやすくなる。こうした問題に、遠く離れたまま建設的に対処するのは難しい。特に、意見の不一致が個人的なものに発展してしまうと、解決はおぼつかない。そこで上級マネジャーが公式に、調停者やリスク管理者、支援者、そして最終的な意思決定者としての役割を担う必要がある。
1カ所で行われる一般的なプロジェクトと比較してみよう。上級マネジャーはイノベーション・プロジェクトを承認したら、あとは一歩下がってチームに任せればよい。こうした不干渉型のアプローチが可能なのは、現場にいる幹部が、非公式なコミュニケーションやフィードバックの仕組みを通じて監督していけるからだ。現場にいれば困難な問題をすぐに察知でき、必要であれば介入して解決に乗り出せる。
グローバル・イノベーションに長けた企業は、プロジェクトで上級幹部に明確な役割を与える。たとえば、メガネ用レンズのグローバル・メーカーであるエシロールでは、国際的プロジェクトのリーダーは経営陣の誰かが務めることになっている。幹部が直接的に進捗を管理し、重要な意思決定を行い、プロジェクトが会社の戦略目標から外れないようにするのだ。