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「バーバリー・キス」はユーザーのキスマークをメッセージと共にメール配信できるプロジェクト。カメラでくちびるを撮影するほか、スマホやタブレットなどのタッチパネル端末ならば画面に直接キスをすることでかたちを認識する。

 すでにIT企業とのコラボレーションも進んでおり、昨年にはオンライン上で“キス”を送ることができる「バーバリー・キス」というプロジェクトをグーグルと共同で立ち上げただけでなく、2014年春夏コレクションではiPhone5Sのカメラだけを使って、ファッションショーのライブ配信も行いました。

 どちらも150年以上の歴史があるラグジュアリーブランドには考えられなかったような“クールなコラボ”として、ネット上で大きな話題を呼んでいます。

 「かつて、ラグジュアリーブランドに向けられていた尊敬の眼差しは、今はアップルやグーグルといったIT企業に向けられています。そんななか、ラグジュアリーブランドのなかでバーバリーだけがiPhoneの新作に行列を作るような人々にアプローチできています。洗練されたデザイン、どこにでも持ち運べるモビリティ性、そしてアプリを入れ替えることでユーザーの好きなようにカスタマイズできる点など、iPhoneもバーバリーのトレンチコートと同じように、デモクラティックな価値観のもとで生み出された製品ということができるからです」(ムラカミ氏)

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バーバリーは2014年春夏コレクションで、発売前のiPhone5Sを14台使ってライブ配信した。

 しかも、デモクラティックな価値観をブランディングとして打ち出すことには、バーバリーにとって新しい顧客層の獲得以上の意味があったとムラカミ氏は言います。

 次回は、そんな開かれたブランドを目指すことで起こったもうひとつの変化について、アーレンツCEOの後継者であり、バーバリーというブランド全体のデザイナー、クリストファー・ベイリーCCO(チーフ・クリエイティブ・オフィサー)が自ら行った従来のラグジュアリーブランドでは“禁じ手”とされていた数々の改革の意味について検証してきます。