中国とインド、この二大大国が今後の世界経済を牽引していくと目されているのは、なぜか。それは人口の多さだけではない。圧倒的な勢いで成長を遂げる、その背後にあるのが「アクセルレーター・マインド(加速思考)」である。世界的経営コンサルティング会社BCGが新興国の消費者に直接インタビューをし、その消費マインドを描いた『世界を動かす消費者たち』の発刊を記念し、新興国の消費市場を読み解くヒントを提示する。
中国やインドの起業家たちと話すと、彼らの戦略に対する考え方は先進国企業の経営者とは大きく異なることがわかる。たとえば、彼らは旧来のROIはあまり気にかけない。圧倒的な勢いで成長している環境にあっては、すべての価値は企業のターミナルバリュー(永続価値)にあるからである。彼らが重視するのは、より速く、より創造的に動き、走りながら学ぶことだ。彼らにとって価値創造とは、曖昧な状況でも不安を感じず自信をもって行動できる姿勢から生まれるものである。それは、投資や人材、迅速なサイクルに裏打ちされたものであり、プログラム化された事業計画や、小数第2位レベルの詳細な予測によりもたらされるものではない。
大志を抱き、大胆で、適応力が高く、そして、必要とあれば攻撃的になる――「アクセルレーター・マインド(加速思考)」とでも呼ぶべきものを、こうしたビジネスリーダーたちは備えている。
ユーチューブに、中国の15階建てホテルが、プレハブ工法によりほんの数日で建設される模様を映した2分間のビデオが掲載されている。これを見れば、「アクセルレーター・マインド」がどんなものか、感じ取っていただけると思う。まさに驚くべき光景だが、これに似た快挙をやってのけるビジネスリーダーが大勢いる。広範な事業を営み、驚異的な成長目標をもつ多角的企業を、彼らはつくり出している。こうした早送りのやり方で、壮大な夢を現実に変え、世界経済を塗り替えている。彼らの企業・事業のグローバルな飛躍にともない、アクセルレーター・マインドも世界市場に「輸出」され、永続的なインパクトをもたらす。