ハーバード・ビジネス・スクール元教授、ラム・チャランは経営アドバイザーとしても活躍し、ゼネラル・エレクトリックやデュポンをはじめ世界の有力企業トップに対して助言を提供してきた。去る2013年7月にマイクロソフトが発表した改革案を受け、チャランが改めて組織変革を語る。その核となる「統合」を実践するには4つの要諦がある。


 フォードのOne Ford戦略、アップルのOne Apple戦略に続いて、今度はOne Microsoftのようである。マイクロソフトCEOのスティーブ・バルマーは先週、組織を1つの戦略の下に結束させ、顧客経験価値を向上させる構造改革案を明らかにした(2013年7月時点。翌8月バルマーは、12カ月以内に同社CEOを退任すると発表)。

 企業の組織再編は今後いっそう盛んになるだろう。なぜなら、デジタル化によって顧客に主導権が移り、企業は時代遅れな部門別採算制の垣根を取り払い、魅力ある顧客経験を創造せざるをえないからだ。バルマーもマイクロソフトの社員に向けたメッセージで、こう述べている――「今後は、製品ラインを複数の島の組み合わせとしてではなく、統合的に捉えていきます」

 しかし、組織構造を変えるだけでは十分ではない。バルマーは、それをわかったうえで次のように続けている。「改革の最終的なカギは、いかに組織横断的に連携するかです」

 スピードと顧客中心主義を実現するためには――しばしば見過ごされているが――「統合」が不可欠である。そしてそれは、リーダーの仕事である。

 統合には2つの側面がある。1つは、タコツボ化した複数の業務部門やプロフィットセンターが、顧客の具体的要求に沿って足並みを揃えるようにすること。もう1つは、複数のチャネルにおける顧客経験を統合することだ。たとえば銀行なら、ウェブサイト、ATM、各店舗窓口での体験を統合するということになる。ネットバンキングの責任者と店舗の支店長では、提供するサービスについて違う意見を持っている可能性があるし、技術部長と製造部長では、製品機能に求めるものが違う場合がある。統合とは、そうした異なる観点をすべて考慮し、最適なトレードオフを行ない、トータルで優れた顧客経験を提供して齟齬を生じさせないことだ。