日常生活からビジネスに至るまで、多くの人に求められる決断力。特に経営者においては、意思決定がその企業の命運を左右するほど重要であり、優柔不断であることは許されない。不確実性が増し、環境が頻繁に変化する時代にあって、より素早い意思決定が求められていることを困難に感じる経営者は多い。しかしながら、ビジネスにおける意思決定はけっして難しいものではない、と出口治明氏は説く。素早い意思決定は集中力を磨くことで生まれ、よい意思決定は「自分自身」「歴史」「周囲の人間」という3つの鏡をよく見ることによって生まれるという。戦後初の独立系生命保険会社を設立し、即断即決を実践してきた経営者が、意思決定の要素を分解し、何が必要とされるのかを語った。

ビジネスにおける意思決定は結果がすべて

 プライベートで行う意思決定では、本人が満足している限り、結果は問われない。だが、ビジネスにおける組織の意思決定では、結果がすべてである。いい加減な思いつきで意思決定しても、会社に成果をもたらし、お客様の利益に寄与するものであれば、それはよい意思決定である。反対に、どれほど真剣に考えた意思決定でも、会社にマイナスの効果しかもたらさず、お客様の不興を買うようなものは、悪い意思決定である。

 意思決定と結果の相関には、大きく分けて2種類ある。意思決定から短期で結果が出る場合と、意思決定から結果が出るまでに長い時間がかかる場合だ。通常の企業活動における意思決定は、基本的には1年以内、長くても数年で結果が出る。大半の意思決定は短期間で結果が出るので、結果の良し悪しによって意思決定の是非を判断することが可能となる。