意思決定の研究は
実務に活用されているか

 この10年ほどの間に、意思決定に関してたくさんの研究が進められた。その多くは内容が有益なだけでなく、読み物としても素晴らしいものだった。しかし同時に、特に企業幹部に関してはそうした研究から学んでいない、と指摘する声も高まっている。彼らは研究の成果を適用できない、あるいはそうする気もないように思われる。意思決定についての解明が進んでいるほどには、現場での改善は行われていないのだ。

 私はこの謎についてしばらく考えたのだが、研究成果と現場との断絶にはしかるべき理由があることを提起したいと思う。企業幹部が優れた意思決定を望んでいないわけではない。また、みずからが間違いを犯す傾向があることを否定しているのでもない。

 問題は別のところにある。それは、今日までに発表された意思決定に関する研究の大半が、一つのタイプの意思決定にしか適用できないということだ。さらに、そうした研究が適用できる意思決定は、マネジャーにとっては困難で能力を試されるほどのものではない。彼らの最も重要かつ困難な意思決定、すなわち、自社の業績に影響を与える戦略的意思決定には、まったく別のアプローチが必要なのである。