これには何の問題もないかもしれない――ただし、他者の助言の精度を判断する能力が、不安によって損なわれていなければの話である。そこで、私と同僚は次の実験を行った。まず、参加者の一部には過去に不安になった経験について書いてもらい、残りの人たちには最近の食料品店での買い物(通常はニュートラルな経験である)について書いてもらった。その後、ビンの中に入っているコインの枚数を当てるよう指示した。この実験では、参加者は悪いアドバイスかよいアドバイス(たとえば、枚数の正確な推計)のどちらかを与えられた。ニュートラルな状態の参加者はよいアドバイスには従い、悪いアドバイスには従わない傾向が強かった。しかし不安な状態の参加者には、そうした違いが見られなかった。不安により、よいアドバイスと悪いアドバイスを区別する能力が落ちてしまったのである。
この2つの傾向――アドバイスを受け入れやすくなることと、峻別しなくなること――は、組み合わさると悪影響を及ぼす可能性がある。実際、我々がこのテーマで行った別の実験では、不安を引き起こされた被験者は、助言者の利害が自分と相反すると知っている場合でも、そのアドバイスを歓迎し頼る傾向を見せた。具体的には、アドバイスの受け入れによって助言者に金銭的な報酬が与えられる場合である。
実験で引き起こした不安感は、比較的弱いものだった。しかし、重大な意思決定に伴う不安感は非常に大きく、慎重な計画や分析を台無しにしてしまう可能性もある。
重要な決断を前にして動揺をなくすことが、常にできるとは限らない。しかし、悪いアドバイスの犠牲になる可能性を最小限にする方法はある。
1.リラックスした状態となり、明確な考察ができるようになるまで、大きな意思決定を行わない。
2.性急な判断と細部へのこだわりを避ける。ゴルフに例えるならば、完璧なショットを打つための際限ないディテール――適切なクラブ、正しいグリップ、ちょうどよい肩の回転、等々――よりも重要な結果にフォーカスしたほうがいい。すなわち、どこにそのショットを打ちたいかである。
HBR.ORG原文:How Anxiety Can Lead Your Decisions Astray October 29, 2013
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フランチェスカ・ジーノ(Francesca Gino)
ハーバード・ビジネススクール教授。経営管理論を担当。著書にSidetracked: Why Our Decisions Get Derailed, and How We Can Stick to the Planがある。