気の進まない作業を先延ばしにすれば、喉に刺さった小骨のように不快感を長引かせる。リスクを前に躊躇せず、速やかに実行するにはどうすればいいだろうか。ブレグマンが提案するのは、「感情を恐れずに味わう」ことだ。


 先日、早朝にカリフォルニア州マリブでハイキングをした。浜辺へとつづく道で、私は岩の上に腰かけて波間のサーファーたちを眺めた。その勇敢な姿に、私は心を打たれた。彼ら彼女らは夜明け前に起き出し、凍るような冷たさに耐えて海に入り、サメに襲われる危険も覚悟で、押し寄せる波の中を沖へ向かって漕いでいくのだ――すべては、最高の波に乗るために。

 15分も見ていると、1人ひとりを区別できるようになった。サーフィンのスタイルやボードの扱い方、スキル、遊び心にそれぞれ特徴がある。

 もっとも、本当に私の心に響いたのは、彼らの共通点だった。どんなにうまくてもベテランでも、いかに優雅に乗りこなしても、最後はみんなまったく同じだ――サーフボードから海に落ちて終わる。

 落ちまいと必死になるサーファーもいれば、落ちることを楽しむ人もいた。落下がすべて失敗だというわけではない。波が弱くなれば乗り続けることはできないので、ボードから降りるしかない。

 しかし、ここで私はとても興味深いことに気づいた。失敗による落下と、勢いを失った波から降りる場合との違いは、意外性という要素しかない。サーファーは、どんな場合でも必ず最後は海に落ちる。ほかにライドを終える方法はない。

 このことに、私は考えさせられた。たとえば私たちが、波の上のサーファーのように人生を生きるとしたら、どうなるだろう?

 そうすれば、人はもっとリスクを取るようになる――これが私の頭に何度も浮かんだ答えだ。

 ずっと避けていた、上司(あるいは部下、同僚、パートナー、配偶者)との厄介な会話はどうなるか。あなたのほうから口火を切るだろう。

 先延ばししている企画書の作成(あるいは論文や本の原稿、eメール)は? すぐに始めるだろう。

 あれこれ考えすぎて行き詰まっていた、新しいビジネスのアイデア(あるいは製品、販売戦略、投資)は? 最後までやり抜くだろう。

 そして落下してしまったなら――そう、リスクを取れば、落下はつきものだ――あなたは再びサーフボードに戻り、波へと漕ぎ出していくだろう。どのサーファーもそうしていた。