文化として定着して初めて仕組みは機能する
――改善提案が生まれ続けるのは、意識の高い社員が多いからでしょうか。
こうした意識は教育で身につくものではありませんし、意識やモラルの高い人が改善提案をする、という考えでも機能しません。そうした風土をつくることが重要なのです。いまでは「MUJIGRAM」に従うということが当たり前になっています。通常業務のなかに、「MUJIGRAM」の改善も含まれているのです。ただ、こうした風土が根付くには10年、20年といった時間がかかります。「MUJIGRAM」は18年経ちましたが、やはり最初は定着するまでに時間がかかりました。
新しい文化を定着させるには、それなりの仕掛けが必要です。採用された提案1件につき500円という、分かりやすい金銭的報酬もあります。採用された中でも、特にいい提案については半期に1度の社長表彰も行っています。また、提案強化月間のような社内キャンペーンをすると、普段の2倍、3倍の提案が出てきます。「MUJIGRAM」を陳腐化させないため、常にこうして盛り上げるための仕掛けを考えなければなりません。
ただ、文化は一度定着してしまえば、維持するのは楽になります。「MUJIGRAM」が進化するほど、その改善効果によって仕事が楽になるのが見えているのですから、どんどん改善提案がなされるようになるのです。このレベルになって初めて、仕組みは本来の機能を果たすようになります。根付くまでの長い期間をいかに乗り切るかが重要であり、徹底的に続けることが、強い仕組みを生み出します。
海外展開もしていますが、海外に出向した社員が最初にやることは、現地の「MUJIGRAM」をつくらせることです。まずマニュアルをつくり、それを時間をかけて浸透させていけば、ローカル・マーケットに適合したものとなり、少しずつ仕事も進化していくのです。これが実行力を高めるということです。
――つまり、そうした仕組みが競争力になるということですね。
その通りです。我々の「MUJIGRAM」について聞いてくる企業は多くありましたが、どこもつくったという話は聞きません。それだけ繰り返し改善を続けるということは大変なのです。だからこそそれが社風にもなるし、競争力にもなります。
始めたことは最後までやめないことです。継続は力なりと言いますが、継続させるためには進化させなければなりません。お客様や社員の変化によって「MUJIGRAM」は進化し、それに合わせて業務がレベルアップすることで、ビジネスモデルも変えていける。時代に合わせて変化するためには、いかに血の通った仕組みをつくれるかが肝要なのです。(了)