1995年、ハーバード・ビジネス・レビューの2人の編集者が独立し、テクノロジーとデザインに焦点を当てた新機軸のビジネス誌を創刊した。やがて最も進歩的なビジネスメディアの1つとして地位を確立する『ファストカンパニー』だ。革新的な企業や業務慣行、型破りなビジネスリーダーを紹介する同誌は絶大な支持を誇る。創刊者の1人ウィリアム・テイラーによるHBR.org連載記事をお届けしていく。第1回は、優れたリーダーが実践する学習法について。


「真の発見の旅とは、新しい景色を探すことではない。新しい目で見ることなのだ」(マルセル・プルースト)。世界に名高いデザイン・コンサルティング会社、IDEOのゼネラル・マネジャーであるトム・ケリーは、この有名な言葉をよく口にする。自社の斬新な戦略、顧客のための新製品、従業員を束ねるよりよい方法などを追求するリーダーにも、この小説家の言葉は当てはまる。変化し続けるこの世界で、優れたリーダーはけっして学ぶことをやめない。

 いまや、あらゆる階層のリーダーにとっての課題は、勢いや力や戦術で競合をしのぐことではない。大小さまざまな局面におけるより優れた「思考」によって、未来に対する独自の視点を見出し、競合に先駆けて自社がその未来にたどり着くよう貢献することだ。したがって、次のシンプルだが重要な問いに答えられるかどうかが、リーダーシップを左右する――あなたは世界の変化に負けない速さで学んでいるだろうか?

 もちろん、新しく何かを学ぶということは、新しい考え方に身をさらすことにほかならない。したがって、もしも速やかに学びたいのなら、アイデアの在りかについてこれまでとは考え方を変えなくてはならない。ここで、私が長年の経験から見出した、リーダーを学習者にする方法を紹介しよう。3つの意識を常に持つことによって、あなたは世界のめまぐるしい変化に遅れを取らずに、学習を続けられるだろう。

第1に、最高のリーダー(そして学習者)は、最も広い視野を持つ。スティーブ・ジョブズの死後、多くの人々と同じように、私もその生涯や業績について多くの文を読み、映像を見た。参考になったものの1つは、PBSの古いドキュメンタリー番組「マニアたちの勝利」(Trumph of the Nerds)で、イノベーションの源泉についてシリコンバレーの大物たちにインタビューしている。ジョブズは最初のマッキントッシュについて語っているが、半導体やソフトウェアよりも、絵画や音楽、芸術への言及が多い。

「結局のところ、それ(創造力)は審美眼に行き着くのです。人間が生み出した最高のものに自分自身を触れさせ、いま取り組んでいることに取り入れるのです。・・・・・・思うにマッキントッシュの成功の一因は、関わったのがミュージシャンや詩人、芸術家、動物学者、歴史家だったことでしょう。彼らはたまたまコンピュータにも精通していたのです」