統合プロセスの責任者はどこにいる?

 何とも皮肉なデータがある。1999年に実施されたM&A(企業の買収・合併)のなかで、当初の戦略目標や財務目標をクリアできたケースは全体の半数にも満たない。しかも、M&Aに投入された費用はこれまでになく多額であったにもかかわらず。

 J.P. モルガンによれば、全世界で見た99年のM&A投資総額は3兆3000億ドル、98年より32%も大きい。そして、1兆6000億ドルという途方もない金額が無駄に終わってしまった。非常に高い買い物についたわけだ。

 さらに皮肉な話がある。想像しただけでも、買収企業を親会社に統合するのは慎重かつ複雑なプロセスである。しかし驚いたことに、ほとんどの場合、この統合プロセスの責任者が存在していないのである。

 デュー・デリジェンス(買収企業候補の適正評価手続き)を担当するチームは、買収企業について熟知することになる。しかし買収が完了した時点でこのチームは解散し、以後は経営陣が合併後の組織の指揮に当たる。ところが、一つの組織として統合されるまでのプロセスに責任を負う者がいないことが多々ある。

 ちなみに、そのプロセスとは次のような一連の仕事である。

・異なる2つの社内業務を統合させる方法を策定する

・期日までに統合を完了させる

・統合によって期待される業績目標を達成する

・買収企業の従業員に親会社について、親会社の従業員に買収企業について研修を施す

 このような決定的な活動にだれも責任を負っていないのだ。