LBOは好業績をもたらす

 M&A(企業の合併・買収)に関する最近の調査結果は、驚くべき事実を示している。

 1984年から94年までを対象とした同調査によると、LBO(leveraged buyout:借入金をテコとした買収)を専門とする企業(以下LBO企業)のおよそ80%が、「ファンドの投資家に対して、資本コストと同等以上のリターンをもたらしている」と回答しているのだ。多くの場合、案件の交渉中にライバルが出現し、買収価格が押し上げられているにもかかわらず、である。

 これらLBOの実績は、M&A全般におけるそれとはまるで異なる。つまり、M&Aの投資リターンは一般には思わしくなく、時として悲惨な結果すら招いているのだ。

 LBO企業によるM&Aは、概して、一般企業が手がけた案件よりもはるかに高い成果を上げている。この事実を知ると、一般企業のトップ・マネジメントはショックを受けてしまうかもしれない。

 というのも、LBO企業というものは、買収によるシナジーを追求しているわけでもないばかりか、当該業界におけるマネジメント経験に乏しいこともしばしばである。それゆえ、初期段階では買収対象となる企業の経営陣からたいそう警戒されることも多い[注1]。

 それでは、LBO企業による買収が、なぜこれほどまでに成功を収めているのだろうか。

 これまで我々は買収戦略や交渉戦略をさまざまな企業にアドバイスしてきたが、その経験によれば、成功のカギは買収プロセスにある。

 一般企業のマネジャーの多くは、企業買収を機械的な作業の積み重ねと見ているせいか、たいてい次のように考える。

「この企業を買収したい。ついては、どの程度の価値があるのかを調べ、それよりも低い価格を提示して相手の出方を見よう」

 そして、実際の交渉となると、投資銀行や法律事務所といった第三者にその管理・進行を任せてしまう。