資源(リソース)獲得のための戦略フレームワーク

 企業が新たな戦略を実施するに当たっては、例外なく新たな経営資源とケイパビリティの獲得を必要とする。しかし、社内の開発努力だけでは戦略の実施に必要なすべての条件を整えることはできない。したがって多くの場合、ライセンス契約、アライアンス(企業提携)、M&A(企業買収)を検討することは、理にかなった選択である(囲み「新たな経営資源の獲得に向けた最適進路の選択」を参照)。

新たな経営資源の獲得に向けた最適な進路の選択

 新たな成長戦略に必要な経営資源を社内で開発するのか、それともライセンス契約、アライアンス提携またはM&Aを通じて獲得するのかを決定するに当たっては、次の3つの基準を重視する必要がある。

(1)既存の経営資源と新たに必要な経営資源との間には、どの程度の関連性があるか。

(2)ライセンス契約の可能性がある相手先などの外部パートナーとの間に、提供される経営資源の価値について、どの程度共通の理解がなされているか。

(3)外部の相手先企業との関係をどの程度深め、広げることが望ましいのか。

 しかし意外なことに、企業は一般的に、新たな経営資源の獲得を単一の手段のみに頼っている。たとえば通信事業者162社を対象にした、我々の10年間にわたる世界規模の調査では、利用可能なすべての手法を積極的に利用した企業は3分の1にとどまっていることが明らかになった。

 ほとんどすべての経営資源を社内で開発している企業もあれば、ライセンス契約、あるいはジョイント・ベンチャー設立に焦点を絞り込んでいる企業もある。さらに一部の企業は、もっぱらM&Aを通じて経営資源を獲得している。すなわち、M&Aを社内の開発努力を補完する唯一の手段として利用するといった類のことである。このように、企業が新たな経営の強みを確保しようとする場合、一つの手法に頼ってこれを実現しようとすることがほとんどである。