既存企業が破壊者の存在を受け入れて対処するまでには、エリザベス・キューブラー・ロスが唱えた「悲嘆の5段階」に似たプロセスをたどるという。言い換えれば、脅威を率直に受け入れるのはそれほど難しいということだ。
この数年、オーストラリアのメルボルンやチリのサンティアゴなどを含む世界各地で、シリコンバレーと同じような活況が見られる。グローバル・アントレプレナーシップ・モニター(GEM)によれば、世界中で起業が急激に増えており、貪欲な起業家の数は50カ国以上で4億人を上回るという(2012年1月時点)。
これは世界経済にとっては朗報だが、あなたにとっては悪い知らせかもしれない。少なくとも、戦略を再考させる類のニュースだ。
この4億人のなかの誰かが、あなたの満たされない顧客を狙っている可能性がある――その具体的なニーズに応えるビジネスプランを携えて。それはニッチ市場への集中戦略であり、成功したスタートアップ企業(たとえばサウスウエスト航空)が使ってきた常套手段だ。すべての人々にすべてを提供しようとする企業が、実際には誰にも真の満足を与えていない場合、この種の参入者にとってよい機会となる。
ソーシャルマーケティングの分野で成功し注目を集めるピンタレストに対抗した、ダートイットアップ(Dartitup)の例を考えてみよう。ピンタレストの利用およびコンテンツの大半は女性ユーザーによるもので、同社は女性ユーザーを意識したモデルを構築している。男性もそれに引っ張られてはいるが、相対的に消極的である。そこに目を付けたダートイットアップは、男性向けの写真共有サイトとして参入した(「ピンボード」が「ダーツボード」と言い換えられているのも、その象徴だ)。
もしあなたがこの事例におけるピンタレストであれば、どう対抗するだろうか。我々の経験からいえば、この話は一般的に、かの有名な「悲嘆の5段階」説(エリザベス・キューブラー・ロスが唱えた、死など逃れられない不幸に直面した人の感情の変遷)に酷似した段階をたどる。