フォルクスワーゲンは多くの企業を買収し、買収した企業の既存のブランドをそのまま残し、多くのブランドを持つことでシェアを拡大しています。プラットフォーム戦略や、モデュラーデザイン戦略、生産システムなどカギとなる部分は統合していくのですが、アウディ、シュコダ、ランボルギーニ、ベントレー、ポルシェなどそれぞれのブランドの哲学、コンセプトなどのブランド価値は残していくようにしています。
もちろん、トヨタのように自前で成長を遂げていく姿もありえます。どちらの戦略が良いというわけではありません。
――ドイツ企業は経営管理においても「選択と集中」ができている印象ですね。
ドイツ企業やアメリカ企業は、アウトソーシングに出し、サプライヤーを活用するなど、機能の外部化に、比較的柔軟に対応しているように思います。そのことで、規模の経済の恩恵を得ているのは確かです。
とはいえ、一概にどちらのシステムが良い悪いとは言い切れません。個々の経営手腕や企業文化や実行力によっても変わってきます。ドイツにも多角経営の企業はありますし、特定分野に集中しても利益につながらない企業もたくさんあります。あくまで大きな傾向の違いであるとお考えください。
ホワイトカラーの生産性向上が日本の課題
――ドイツ企業のマネジメントに学ぶ点は大いにあるように思います。同時に、しっかり休暇を取るがパフォーマンスを下げないという、個人の労働生産性の高さも強さの源泉と言えませんか。
製造や物流の現場で働く人々や、店舗で接客を行う店員、サービススタッフに関していえば、日本は世界的に見て非常に生産性が高いのです。問題は、ホワイトカラーにあります。
日本企業のホワイトカラーの生産性が相対的に低い理由については、「解雇しにくいシステムになっているため、単に経営者が解雇を怖がっているだけ」としか言いようがありません。そうでなければ、企業はなぜ、あれだけ多くの生産性の低いホワイトカラーを雇い続けているのか全く理解ができません。
特に最近ではIT技術が台頭し、飛躍的に生産性が向上しています。業務の効率化が進むなか、ホワイトカラーの生産性の問題はいっそう大きくなってくるのではないでしょうか。
また残念ながら、多くの教育レベルの高い優秀な女性たちが、その能力を生かして活躍できるようなホワイトカラーの仕事に就けていない、ということも日本企業の課題の1つです。文化的な問題もあるのだと思いますが、残念なことです。
ドイツは現首相(アンゲラ・メルケル氏)は女性ですが、それはたまたまです。インドの方が先でした。経営陣など指導的なポジションとなると、女性の割合はまだまだ高いとは言えません。ただ、少なくとも女性の力を無駄にしている国でないことは確かです。女性の力を活用することは、日本のホワイトカラーの生産性を向上させる上でも、大きなカギとなるはずです。
(了)
ドイツ・ミュンヘンに本社を置く、ヨーロッパを代表する経営戦略コンサルティング・ファーム。1967年設立。現在、36ヶ国、51オフィス、2,700名のスタッフを擁する、世界でトップ5に入るグローバル・ファーム。
日本法人は、株式会社ローランド・ベルガー。日本国内における本格的なサービスに加え、ダイナミックに展開するグローバル市場へのアクセスポイントとして、また、日本の市場・産業・企業情報の発信地として世界各国のオフィスと緊密な連携を取りながらコンサルティング・サービスを行う。