創業以来、日本のインターネット業界を牽引してきたヤフー。PC時代の雄は、しかしスマートフォン/タブレット市場では後れを取りつつあった。いつのまにか「高収益だがつまらない」組織となった5000人規模の大企業をいかにして変えるかが、2012年に社長兼CEOに抜擢された宮坂学氏の挑戦課題であった。高業績を上げ、なおかつ「ヤフーバリュー」を掲げ、人材の質を大きく上げていく試みを聞いた。

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編集部(以下色文字):ヤフーが長期にわたって高業績を維持している要因はどこにあるとお考えですか。

宮坂(以下略):いくつかあると思いますが、まずは会長の孫正義や前社長の井上雅博の先見性を抜きに語ることはできません。痩せ細っている土地をいくら耕しても、作物は実らないものです。海のものとも山のものとも知れないインターネットの世界を、10年経てば豊かになる土地だと看破し、なかでも、広告とeコマースに狙いを定めたことが高業績の大きな要因だと思います。私も「登る山を決める」という言い方をしますが、「この土地、この山で事業をやる」という「事業立地」を間違えると、どんなに努力しても業績は上がりません。