小さな3つの行動

 収益の見込める新規市場への進出や新しい製品の開発、あるいは市場につながるイノベーションによって、組織は高い業績を生み出すことができる。しかし本稿で注目するのは、このような大きな力ではなく、現場で生まれる小さな行動である。なぜなら大きな力は個人の能力や環境に依存する部分が大きく、マネジメントに不確実性がつきまとうが、小さな行動はマネジメントが十分可能だと考えるからだ。

 ここで言う現場での小さな行動とは、職場で困っている仲間を助けたり、後輩たちにわからないことを教えたりするような支援行動、やるべきことをきっちり行ったり、職場でのルールや秩序を守るような勤勉行動、そして自分なりに仕事を工夫したり、自分の仕事における能力を伸ばしたりするような創意工夫行動のことを指す。これらの行動の一つひとつはそれほど大きな価値をもたらすものとはいえない。しかし、こうした小さな行動の文化を積み重ねることは、組織の大きな力の土台となっていくのではないだろうか。そのような行動が起きている組織や職場は、そうでないところと比べて業績に大きな違いが表れるのだ(図表1「職場における小さな3つの行動」を参照)。