助け合いの文化が業務効率を最大化する

 リーダーにとって、組織内の助け合いを奨励すること以上に重要な仕事など、まずないだろう。卓越した業績を上げる企業では、できる限りよい仕事をするために、同僚同士が当然のように助け合っている。これには実利的な理由がある。すなわち、仮に組織学でいう「組織市民行動」(組織の効率を促進する、職務要件に含まれない任意の個人的行動)がなされない状況で最高の効率を求めるのであれば、業務配分を常に完璧に最適化し、プロジェクトをけっして既定路線から逸らさず、一から十まですべてをきっちりスケジュール通りに進めなくてはならないためである。

 しかし、この助け合い行動は、知識労働の時代にはいっそう欠かせないものとなっている。というのも、プロジェクトは至極複雑になっており、望ましい事業成果を上げるカギは創造性にあるからだ。単なる仕事の分担に留まらず、アイデアの質を高めたり、よりよく実行したりするために、視点、経験、専門性の提供がなされる、いわゆる「コラボレーション型支援」が目立つようになっている。

 とはいえ、助け合いの文化は同僚間で自然と生まれるわけではなく、積極的に醸成しなくてはならない。社会集団においては一人ひとりが葛藤を抱えている。同僚に助け船を出せる立場になったとしても、競争心に燃えるかもしれない。だれかに支援を求める立場になっても、体面をかけて独力で何とかしようとしたり、力を借りる可能性のある相手を信用しようとしないかもしれない。いずれの立場であっても、時間がかかる割に、支援による成果は不確実なうえ、意義よりも面倒のほうが大きいように思えるかもしれない。組織は、その構成やインセンティブ制度によっては、同僚を助けよう、あるいは助けを求めようという意思を、図らずもいっそう減退させかねない。