ストレスは100%悪いもので、減らすべきもの――この思い込みが、実はストレスの悪影響を引き出しているという。ストレスは避けられないものである以上、そのプラス面にも目を向けて仲よく付き合うことを考えてみてはいかがだろう。


 あなたはストレスにさらされている。締め切り、責任、増え続ける一方の仕事、そして私生活全般から来るものだ。もしあなたが私と同じなら、自分がいかに多くのストレスを感じているか、それを考えることすらストレスだろう。ストレスが自分のパフォーマンスを妨げており、寿命を縮めているのではないかと心配になるのだ。

 いささか妙に聞こえるかもしれないが、「ストレスは悪いものだ」という考え方そのものが、ストレスを実際に悪者にしているとしたらどうだろう。ストレスを違う視点から捉えることで、それが生活によい影響を及ぼす力になる――そんなことはありうるだろうか? イェール大学のアリア・クラムとピーター・サロベイの新しい研究(英語論文)や、『幸福優位7つの法則』(徳間書店)の著者ショーン・エイカーによれば、答えはイエスである。

 だが少し話を戻して、別の疑問から考えてみたい。ストレスとは、そもそも何なのか。

 一般的にいえば、ストレスとは困難や災難を経験(あるいは予期)することである。私たち人間は、他の動物と同様、ストレス要因に対して本能的な身体反応を示す。交感神経(闘争・逃避反応)が活発になり、副交感神経(安静と消化)が抑制され、アドレナリンとコルチゾールが分泌される。こうしたことが起きるのは何のためか。一言でいえば、身体に「活」を入れるのだ。覚醒レベルと集中力を高め、行く手を阻む障害に対処するために、肉体的・心理的な準備を整えるのである。

 これは、よいことのように思えないだろうか?

「ちょっと待った」とあなたは言うだろう。「いつもストレスを抱えていたら具合が悪くなるのでは? 免疫機能に重大な悪影響を与えるのではないか?」

 その通りだ。ただし、ストレスが免疫機能を高めるという証拠もたくさん存在するのだ。

「でも」とあなたは指摘する。「ストレスで鬱々としたり無気力になったりするのでは?」

 その通りだ。しかし一方で複数の研究によれば、ストレスは気力を高め、明晰さを増し、状況をより正確に把握できるようにする。障害を克服する過程で自信を強める効果もある(これは最も長く持続する、最も望ましい種類の自信だ)。つまり、ストレスは悪者であると同時に、どうやらよいものでもあるようだ。この矛盾を、私たちはどう理解すればよいのだろう。

 きっといまあなたは、「問題はストレスの量だな」とつぶやいているに違いない。少しだけならいいかもしれないが、多大なストレスはよくないに決まっている。つまり、ほどほどのストレスであれば自分を強くしてくれるが、多すぎるストレスには打ちのめされる――。