複数の事業を様々な地域で行っている企業の場合は、それぞれの事業分野や地域の状況を把握することも重要になる。それを知ることができるのがセグメント情報だ。果たして、ソフトバンクは「携帯電話」事業の会社といえるのだろうか。
事業分野や地域の状況をつかむ「セグメント情報」

西山茂(にしやま・しげる) 早稲田大学ビジネススクール教授。 早稲田大学政治経済学部卒。米ペンシルバニア大学MBA修了。監査法人ト-マツ、㈱西山アソシエイツにて会計監査・企業買収支援・株式公開支援・企業研修などの業務を担当したのち、2002年より早稲田大学。2006年より現職。学術博士(早稲田大学)。公認会計士。 主な著書に、企業分析シナリオ第2版(東洋経済新報社)、戦略管理会計改訂2版(ダイヤモンド社)、入門ビジネス・ファイナンス(東洋経済新報社)出世したけりゃ 会計・財務は一緒に学べ! (光文社新書) などがある。
これまで、損益計算書から規模と儲けの構造を、貸借対照表から財務と事業の構造を、またキャッシュフロー計算書から企業の動きをそれぞれ見ていく方法を確認してきた。ただ、3つの計算書は企業グループ全体の数字を集計したものである。
しかし、いくつかの事業をいろいろな地域で行っている企業の場合は、それぞれの事業分野や地域の状況を把握することも重要になる。それを知ることができるのがセグメント情報だ。それでは、セグメント情報を使った各事業分野や地域の状況の見方について確認していこう。
セグメント情報の読み方
セグメント情報は、各企業が社内の経営管理のために使っている区分ごとに、各企業が経営管理で重視している財務数字を集計して作成されている。したがって、セグメントの区分から、その企業の社内の経営管理の中での組織の構造が分かり、また集計されている財務数字から、その企業が経営管理の中でどの財務数字を重視しているのかが見えてくる。このうち、セグメントの区分は、企業によって事業分野ごと、地域ごと、その組み合わせなど、いろいろなパターンがあるが、一般に事業分野ごとに区分している場合が多い。
次に、集計されている財務数値としては、セグメント毎の売上高、セグメント利益(あるいは営業利益)、セグメント資産などが多くの企業で集計されている。また、それ以外にも、減価償却費、設備投資額などが集計されていることがある。これらの財務数字から、各セグメントの売上規模や営業利益の大きさが分かり、また、利益率や事業の質につながる投資効率を表すROA(総資産利益率=セグメント利益÷セグメント資産)を計算することによって、セグメントごとの収益力が比較できる。さらに減価償却費の大きさからは、各セグメントの有形固定資産の大きさや、セグメント利益(営業利益)に減価償却費を加えることでキャッシュフローの大きさなどが推測できる。また、設備投資額の大きさから、どのセグメントに積極的な投資を行っているのかが見えてくる。