フィードバックとは簡潔にいえば、「評価結果を評価された本人に伝えること」だ。学習機会や改善につながる有益な手段だが、感情がからむものでもあり、なかなか思うようにはいかない。効果的なフィードバックを職場でうまく機能させるための、4つのポイントを紹介する。
私はエグゼクティブ・コーチングおよび体験教育の実践者として、職場におけるフィードバックの必要性を強く支持している。仕事でより多くの力を発揮し、充実感を得るためには、自分が職場でどう周囲に影響を及ぼし、目標をどの程度達成しているのかを正しく知らねばならない。その情報を集め、そこから学び取るための最も効果的なツールが、直接的なフィードバックなのだ。
フィードバックは1対1の対話形式ゆえに、人間関係の産物と誤解されがちだ。しかし実際は人間関係と同じくらい(もしくはそれ以上に)、「職場の文化」がフィードバックの充実度を左右する。たとえばフィードバックが定着している職場では、フィードバックに関心がなかったり苦手だったりする社員さえもその行為に参加し、改善に貢献することになる。反対に、組織やチームにフィードバックを奨励する文化が育まれていないと、どれほど熱心で有能なフィードバック提供者でもその努力は活かされない。
職場にフィードバックの文化を築くための、4つの要諦を紹介しよう。
1.安心感と信頼を醸成する
率直なフィードバックを与えるためにも、それを受け入れるためにも、安心感と信頼がは欠かせない。神経学者で教育者でもあるジュディ・ウィリスによると、こうしたポジティブな感情は仕事のパフォーマンスを高める。したがって社員が安心してフィードバックできるよう、職場のなかに安心と信頼を築く必要がある。ただしこれは、対立を避けることでも、単なる助言やなぐさめの提供に終始することでもない。対話のなかで、受け手が課題を受けとめる心構えができているかどうか、といった感情面に注意を払うことが大切だ。
【安心感と信頼を醸成するには?】
●互いを知る
個々人の人となりを理解するよう努める。ただし時間をかけてじっくりと打ち明け話をする必要はない。ちょっとした会話のやりとり――たとえば週末に何をしたか、といった質問から始め、徐々に自分のことも話していけばよい。
●感情について話し合う
効果的なフィードバックを共有しようとする組織にとって、感情について話し合えるかどうかは重要なポイントだ。伝えにくいフィードバックには感情がつきまとうものであり、またそもそもフィードバックという行為には難しい感情が生じるものだ。当惑や失望、フラストレーションや怒りなどの感情について話せるようになれば、本物のフィードバックができる安全で健全な文化が職場に根づいたといえる。
●「ノー」が言えるようにする
フィードバックを推奨する文化の落とし穴は、「フィードバックしてもいいですか?」と尋ねられた時に「もちろんです」と答えざるをえない点だ。フィードバックを受ける準備ができていない時には延期できる自由を確保すること。受け手が自由にノーと言える環境ならば、実際にフィードバックが行われる際には参加者全員が意欲的になる。