いかに有用なインプットを得て、それをコンセプトに昇華し、アウトプットにつなげていくか。いま、IDEOやスタンフォード大学d-schoolが提唱したことで、デザイン思考は近年注目を集めている。行動観察はデザイン思考において、重要な手段として位置づけられているが、ともすればやや技術論に走りすぎる感もある。百花繚乱のデザイン思考の系譜を整理しつつ、実務家から見た本来の目的、つまりクリエイティブの手段としていかにあるべきかを考えていく。

IDEOで一躍有名となったデザイン思考

 消費者を知り、インサイトを探り当て、商品開発やビジネス創出に活かすことは、近年ますます難しくなってきている。そんななか、昨今「デザイン思考」という言葉をいろいろなところで耳にするようになった。しかし流行するにつれ、人によってはとらえ方と解釈が異なることに気づく。そこで本稿ではなぜいまデザイン思考が注目され、どの領域に活用可能で、どのような課題があるのかについて掘り下げてみたい。

 デザイン思考(design thinking)という言葉それ自体の起源は定かではないようだ。