日本で最も精力的に働く経営者といわれる、日本電産・永守重信社長。みずから創業した会社を40年で1兆円企業へと育て上げた経営力には計り知れないものがあるが、一方で注目すべきはその仕事ぶりである。世界のモーター業界でトップ企業となり、自身の年齢も70を迎えようとしているいまなお、みずからハードワークをこなす。この持続的エネルギーの源泉は仕事への思いなのか、社会への思いなのか。日々の仕事への向き合い方から、困難な意思決定を下す際の心境まで、さらにはワーク・ライフ・バランスに対する考え方まで聞く。

努力するだけでは成功しない。
だから、懸命に努力する

編集部(以下色文字):創業されて社長になられた時の心境を「実際にその席に座ってみると、肉体的にも精神的にも超がつくハードさで、想像より楽しいものではないことが、やがてわかった」とご著書に書かれています。経営者の仕事で最もハードだとお感じになるのはどのような場面でしょうか。

永守(以下略):どんな企業でも、業績の好不調はつきものです。好調の時であれば、意思決定も難なくできるので、それほど負担に感じることはありません。しかし、業績が悪化している時期はそう簡単ではありません。放っておくと、どんどん悪いほうに向かいます。業績悪化を立て直すための意思決定は、とてもハードです。