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「手術のたびに集中力を高めているようでは、一人前の外科医とは呼べない」。天皇陛下の執刀医として日本中の注目を浴びた心臓外科医であり、これまでに6000例以上執刀して98%以上の成功率を誇る筆者はこう指摘する。一瞬の判断ミスが最悪の事態を招く心臓手術の現場では、常に集中力が求められる。では、集中力の源泉とは何か。それこそが平常心である。本稿では、58歳の現在でも年間450例以上の手術を行う医師によって、いかなる時も平常心を保つための秘訣が明かされる。
医師の仕事は社会を再生産すること
手術という行為は、患者につらい思いをさせても、彼らの残りの人生を快適にすることである。そのため医師が手術を選択した以上、失敗は許されない。
技術的には、医師が患者の死から学ぶことはあるだろう。しかし、患者が死を迎えたその瞬間に残るものはない。何も残らないということは、何も生んでいないということだ。