従業員の健康も生産性の向上も、組織のマネジメントにとっては重要な問題であり、特に働く人々の心の健康をポジティブな面から注目する動きは近年、活発になっている。本稿で紹介するのは、健康の増進と生産性の向上を両立させるための考え方である「ワーク・エンゲイジメント」だ。ワーク・エンゲイジメントは仕事に誇りを持って熱心に取り組み、さらに仕事から活力を得ている状態をいい、これが高い人は心身の健康度が高く、組織に愛着を感じ、生産性も高い。ワーク・エンゲイジメントについて解説するとともに、これを高める方法についても論じる。

ポジティブな側面から
心の健康を考える

 一人ひとりの従業員が健康でいきいきと仕事に取り組むことは、従業員の幸せにとっても、組織全体の生産性にとっても重要である。ところが、これまでの職場のメンタル・ヘルス対策では、従業員の健康には関心を寄せるものの、生産性の向上には、あまり注目していなかった。むしろ、生産性の向上を促すことで、かえって健康を損ねるのではないかと懸念すらしていた。

 一方、組織のマネジメントでは、従業員一人ひとりの生産性には目を向けるが、その健康にはあまり注意してはいなかった。むしろ、健康状態に配慮することで、かえって生産性が落ちるのではないかと懸念していた。その結果、これまでのメンタル・ヘルス対策と組織マネジメントとは、お互いに協調することなく展開されてきたのである。