5歳児の創造性の95%は30年で失われる
非日常的の刺激の一つとして、たとえば、レゴの社長兼CEOヨアン・ヴィー・クヌッドストープ氏の講演では、「遊び心」(プレイフルネス)の重要性が語られた。クヌッドストープ氏は、「残念ながら、仕事と遊びはあまりにも分断されている」とし、遊び心は信頼と同じぐらい重要だと語る。

レゴ社長兼CEO、ヨアン・ヴィー・クヌッドストープ氏。マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て2001年にレゴ入社、2004年より現職。
「5歳児の創造性の95%は30年で失われてしまうという。人はなぜ年をとるのか。それは遊ぶことをやめたからだ。放っておけば人の脳は無意識にルーティンで情報を処理しようとしてしまう。裏を返せば、創造性は考えることではなく、行動することから生まれる。実際に、子供たちは自然にそうしている」
そうでなくてもワークライフは複雑になる一方であり、職場も家庭も矛盾とトレードオフにあふれている。どこを向いても、ストレスの源だらけだ。「大人だって遊ばなければ、楽観性を失ってしまうだろう。それはフロー(完全なる集中状態)と真逆の状態だ」とクヌッドストープ氏は指摘する。「遊び心は仕事にこそ有用だ。たとえば、学びを促進する。目的達成においても、楽しさやユーモアと学びは相反するものではなく、むしろ相互作用によって創造性が高まるという効果がある。また遊び心によって、ビジョン構築などのビジュアル化が容易になる。職場でも、競争より協力が増えるだろう」。
ただし、リーダーである自分自身が遊び心を発揮しなければ、誰もそんな気分にならない。職場は冷えたままである。そこでクヌッドストープ氏は「アイデアで遊び、殻を破ろう。ネガティブなことは言わない」「身体の健康、社会的健康、精神の健康は、いずれ劣らず重要なものだと認識しよう」「感性、感覚について語ることをよしとしよう」とアドバイスする。「セレンディピティは、偶然のようでけっしてアクシデントではない」と氏は語る。準備された心にこそ、幸運の女神は舞い降りるということなのだろう。
ビジネスにおいて論理思考は依然として重要であるが、アイデアはリラックスした状況のほうが生まれやすい。遊び心は、創造性を生み出す「余白」をもつためにも必要なのかもしれない。クヌッドストープ氏自身は、白昼夢がお勧めだという。「飛行機に乗っているときは電話もメールも追ってこないから、窓の外を見ながら白昼夢にふける。その時間をこよなく愛している」。入りっぱなしのスイッチを切る、自分なりの方法を見つけたい。
(つづく)
*第2回はこちら。