プロダクトアウトでなくマーケットイン

 プロダクトアウトとは、製品を開発した後に、いかにそれを売ってゆくかを考えるという伝統的なアプローチであり、マーケットインとは、最初に消費者のニーズを掴んで、そのニーズに応える商品を開発するというアプローチである。

 コトラーの読者、すなわち、ビジネスマンやビジネスマン予備軍のニーズは何かというと、特定の学説のみですべてを説明することではなく、使えそうな学説や概念はバランス良くすべて知っておきたい、なるべくならリアルな例で理解を促して欲しい、訓詁の学は不要、その時代の新しい知識までカバーして欲しい、役に立つ概念・知識が欲しい、ということである。そのニーズに見事に応えたのが『マーケティング・マネジメント』や『マーケティング原理』といった教科書であった。 

 また、コトラーの教科書を見ると、見事に痒いところに手の届く、分かり易い作りになっていることに感心してしまう。写真、色使い、古典的事例と最新の事例、最近のトピックの囲み記事、縦横無尽の索引、図解、理論的背景、章の頭の問題提起と章末のまとめ、練習問題、徹底的な参考文献、これほどユーザーのことを考えた教科書があろうか、という見事な作りである。これこそ教科書におけるマーケットインのお手本であると感服する。

 このように、コトラーのやってきたことは、ポジショニングといい、出版戦略といい、教科書の商品設計といい、見事である。そして、それを可能たらしめたのが、新しいものをどんどん取り込んでゆく軽やかさ・知的好奇心、いろいろな相手と上手くやってゆく上機嫌な気質と人格的な謙虚さだと考える。次回はそのあたりを書いてみたい。

※次回は9月12日(金)公開予定。

 

【バックナンバー】
第1回:マーケティング4Pとはコトラーが提唱したものではない
第2回:コトラーのマーケティング教科書で日本企業が読むべき個所はどこか

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【お知らせ】

9月24日・25日の二日間、世界中からマーケティングの巨星が結集!

ワールド・マーケティング・サミット・ジャパン 2014

日程:2014年 9月24日(水)10:00~18:45(予定)
       9月25日(木)9:30~17:40(予定)
会場:グランドプリンスホテル新高輪「北辰」
登壇:フィリップ・コトラー、デビッド・アーカー、アル・ライズ、ドン・シュルツ、高岡浩三(ネスレ日本代表取締役社 長兼CEO)、新浪剛史(サントリー顧問 10月1日サントリーホールディングス株式会社CEO就任予定)、吉田忠裕(YKK代表取締役会長)、魚谷雅彦 (資生堂代表取締役執行役員社長)ほか。
申込:お申し込みはこちらから。
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詳細http://worldmarketingsummit.jp/