サッカーで求められるハードワークとは
サッカーの試合もそうですが、ハードワークをすればいいものではありません。同じだけ走ってもゲームの主導権を握っているチームの選手は疲れないものです。逆に後手後手に回っていると「走らされている」状況になり、同じ距離を走っていても疲労具合はまったく違います。自ら主体的に走って試合の状況をコントロールしているのと、リアクティブに走らざるを得ない状況の違いです。主導権を握るにはハードワークが必要ですが、その疲れは走る距離と比例しません。
経営者に疲れが見えないのは、彼らの仕事が常にプロアクティブだからでしょう。仕事を先導 (lead)するリーダーは、現状を打破するために、常に仕掛けることを考えます。たとえ好調な業績を維持しても、それを持続させるために事前の策を講じておく。そして自ら先陣を切って仕事をすることで組織を引っ張ります。企業のなかで最もプロアクティブに仕事をすべき役職の人だから、当然、その疲れ方はリアクティブな仕事に追われる人と異なるでしょう。
プロアクティブに仕事をしている人には、実現させたい世界があるに違いありません。それは、「なんとなく」でも「できれば」でもなく、貪欲なまでに実現させたい思いです。これは経営者に限らず言えることで、目指す世界観は人によって異なるでしょうが、そこに自分の「やりたい」思いが自然と発露されるようです。
こうして考えると、誰しも自分の人生、自分の時間の主導権を握ることが疲れない働き方と言えます。もっとも経営者とて疲れはあるはずです。それを、周囲に見せられない立場であり、周囲に見せない胆力も備わっているのでしょう。
最新号で日本電産の永守社長にインタビューさせていただきました。その中で印象的だったのが、「この年になっても仕事の質が年々高くなっている」という言葉です。ベンチャー企業を大企業に育て業界地図を一変させた永守さんは、プロアクティブに行動することで世界を変えていった方です。自分が先にたって仕掛けることで周囲が変わる。この小さな経験が積み重なって、いまや世界の産業構造まで主導権を握られようとされています。
仕事で主導権を握るにはハードワークが必要かもしれませんが、そのペースが出来上がれば消耗が少なく、持続できるような気がします。
次に考えてみたいのは、組織を先導するリーダーが、どのように組織のメンバーがプロアクティブに仕事ができるよう環境づくりをしているか、です。優れた組織はリーダーだけがプロアクティブに仕事をしているわけではありません。組織全体があたかも全員リーダーであるかのように、主導権をもって働くにはどうすればいいか。次はこのテーマで経営者にインタビューしたいものです。(編集長・岩佐文夫)