なじみのないジャンルの本は、
分厚い本から読んでいく

 著者の出口さんにお会いした人はわかると思いますが、行動力と意思決定の速さも圧巻ですが、一方で知性の幅と深さには驚かされます。その知性を作り上げたのが読書。教養という言葉さえ「言葉足らず」かのような、人類が築いた知性を一人の人間がここまで吸収できるものかと圧倒されます。

 本書では、出口さんが読まれてきた本の数々がこれでもかと紹介されていますが、それらはさしずめ図書館の棚を見ているようで、かつ網羅している領域に至っては、総合大学のすべての学部が結集したかのようです。

 このような「読書」の巨人の読書スタイルは、私にとってほど遠く、どこまで参考になるのか怪しいものです。しかし、本書の中では、「真似てみよう」と思う箇所がありました。それは、第2章に書かれている「未知の分野の勉強のしかた」です。通常、なじみのない分野を勉強しようとする際、入門書から入ります。「はじめての」や「だれでもわかる」というようなフレーズが書名に入った、読みやすそうな本です。ところが出口さんの方法論は真逆です。まずそのジャンルの書籍を7~8冊取り寄せる。そして分厚い本から順番に読むとのことです。4~5冊読む頃には、そのジャンルの全体像がだいたい頭の中に出来上がるので、最後に薄い入門書を読むと、詰め込んだ知識がいっきに体系化されるとのことです。

 著者は読書によって、単に知識が詰め込まれているのではなく、知識の確固たる体系が頭の中に形成されているのでしょう。一度体系化された知識は忘れることがない。このあたりが詰め込んだ知識との決定的な違いがありそうです。

 年齢を重ねることで、新しいジャンルの知識を吸収するハードルが上がってきます。しかし、著者のような読書スタイルを確立していると、知らない話しを知りたくなったらいつでも書籍から吸収できる、と思えるのです。これこそ究極の「知識からの自由」ではないでしょうか。

 つまり本書の読書法は、自分が知らないことに対して完全に自由になれる方法論だと言えます。私も一度、不慣れなジャンルの本を分厚い本から7~8冊読むのを試してみたいと思いました。実践できましたら、ここで紹介したいと思います。(編集長・岩佐文夫)