創造性と生産性の共存は、根源的な経営課題である。そのどちらか一方だけでは、企業は存続し続けることはできない。いまあるものを磨き込み、削ぎ落とす行為と、まったく新しいものをつくる行為を、トレードオフに陥ることなく両立させることは可能なのだろうか。本稿では創造性と生産性の両立という、経営に関わる研究者と実務家が長年取り組んできた根源的なこの問いについて、過去から現在に至るまでの研究の流れを踏まえつつ、新たな解を提示する。

付加価値創造のトレードオフ

 企業はいま、創造性と生産性を求められている。新しい技術やアイデアを基に市場を創造し、競争優位を築くために、創造性は不可欠である。一方、既存の事業やサービスの生産性をいっそう高めることは、永遠の課題でもある。変化の激しい競争環境を生き抜くためにも、創造性と生産性の共存は、根源的な経営課題である。そのどちらか一方だけでは、企業は存続し続けることはできない。

 企業は市場よりも効率的な取引のシステムとして存在するか、または独特な資源の組み合わせにより他者が模倣困難な優位性を生み出すことで、より大きな付加価値を生み出す能力を得るといわれる。この「付加価値」とは、生み出されたモノやサービスの提供価値から、そのために費やした費用を差し引いたものである。