企業はますます効率を重視する一方で、まったく新たな事業に取り組むチャレンジも求められている。言い換えると生産性と同時に創造性が必要な時代。はたしてこの2つは両立可能なのか。本誌最新号で考えた、究極の経営課題とは。

 

生産性が求められる仕事と
創造性が求められる仕事

 仕事の中には、終わりの時間が見える仕事と見えない仕事があります。

 終わりの時間が見える仕事とは、メールの返信や伝票処理、または資料チェックなどです。これらの仕事に求められるのは、仕事の段取りを上手にし、いかに短い時間で済ませるかです。アウトプットの質に大きな差がない。従来通りの質であればよく、問われるのは処理時間となります。いわゆる生産性の概念があてはめやすく、インプット(仕事に投入する時間)を少なくして、アウトプット(一定の質)を出すことが必要です。

 終わりの時間が見えない仕事とは、アウトプットに大きな差がつく仕事です。企画やデザインに関連する仕事に多いような気がします。要は、定型的な一定の質を求められているのではなく、アウトプットの最大化を求められる仕事です。

 たとえば、私のハーバード・ビジネス・レビュー編集部では、毎月、特集タイトルを全員で決めるための会議をします。事前に皆が多様なタイトル案を持ち寄り、各自がプレゼンし議論します。終わってみれば、最初に誰もが出さなかったタイトルに決まったり、当初に仮置きしていた案の通り決まることもあります。時間も1時間以上かかることあれば、あっさりと10分ほどで決まることもあります。要は「これで行ける」と思えるアイデアが出るまで皆で考えます。

 つまり「特集タイトルの良し悪しで、結果に大きな差がつく」と考えているのでとことん時間をかけます。そのため時間が読めません。このような仕事は生産性の概念が持ち出しにくいです。インプット(かける時間)を増やしたからと言って、アウトプットの質が高まるとは限らないところが悩ましいところです。

 創造性を求める場合、生産性を求めづらくなるのは仕方ないのでしょうか。これが創造性と生産性のジレンマで、今回の特集テーマにしました。