グローバリゼーション研究の第一人者パンカジュ・ゲマワットは、世界がフラット化とはほど遠いことを鋭く実証的に示してきた。今回は「大手グローバル企業のCEOはインド人ばかり」という通説を取り上げ、グローバル化にまつわる誤謬を検証する。
サティア・ナデラのマイクロソフトCEO就任を、メディアはたとえば次のような見出しで報じた――「なぜマイクロソフト、そして多くの企業はインド人CEOを好むのか」(英語記事)。これは2011年のタイム誌の記事タイトル、「インドの主要輸出品:CEO」にも符合する(英語記事)。しかし、世界の最大手企業の多くがインド人をトップに擁している、というのは本当なのだろうか?
そこで、世界の企業売上高ランキングである「フォーチュン・グローバル500」の2013年中頃のデータを分析してみたところ、インド企業以外でインド人のCEOを擁する企業はわずか3社しかなかった。アルセロール・ミタル(CEOはラクシュミ・ミタル)、ドイツ銀行(アンシュー・ジェイン)、そしてペプシコ(インドラ・ヌーイ)だ。これは、ブラジル人CEOが率いる非ブラジル企業の数と同じだ。南アフリカ人のCEOが率いる非南ア企業の数はもっと多く、5社である。
「インドで生まれ育つことは、経営を身につけるうえで特別に有利である」――故C・K・プラハラードはそう主張していた(英語記事)。しかしフォーチュン・グローバル500の非インド企業に占めるインド人トップの割合がこれほど少ないということは、プラハラードの主張は間違いだったのだろうか。
いや、必ずしもそうではない。実際、国を離れて、海外で経営者として大きな成功を収めているインド人は多くいる。シリコンバレーでインド人が率いる技術系ベンチャー企業の割合は、1980年代~90年代は7%だったが、現在では少なくとも13%に増えたという(英語記事)。別の統計では25%という推計もある(なお、アメリカの人口におけるインド人の割合は1%に満たない)。海外に移住したインド人の年間所得は、インドのGDPの約3分の1に当たるという推計があるが、そのかなりの部分がシリコンバレーから生じているという(英語記事)。