2011年、ファーストリテイリングはグラミン銀行グループと共同し、最貧民国の一つであるバングラデシュに「グラミンユニクロ」を設立した。このプロジェクトを先導したのが、同社代表取締役会長兼社長の柳井正氏である。グローバルに展開するうえでCSV(共通価値の創造)は当然の取り組みであり、ビジネスそのものがCSVであるべきだと柳井氏は語る。世界一を見据えた、ファーストリテイリングの長期戦略とは何か。一橋大学大学院で「CSVフォーラム」を主催する、名和高司教授が聞く。

バングラデシュで成功すれば、
40億人の市場を開拓できる

名和(以下色文字):ファーストリテイリングは、2011年、グラミン銀行グループと共同して、「グラミンユニクロ」をバングラデシュに設立しました。会社を設立した意図を聞かせてください。

柳井(以下略):グラミン銀行と共同するきっかけとなったのは、You Can Hear Me Now[注]という本を読んだことからでした。携帯電話一つで人々の生活はこれだけ変わるのかと驚くと同時に、何もない環境のほうが、一足飛びに未来に行けると可能性を感じたのです。それ以前から、ムハマド・ユヌス氏の活動に対して賛同していました。保護主義ではなく、事業を始めることで、一人ひとりが自立した自営業者になれるように支援しているからです。