第1の要因は時流に合ったものであり、顧客と過ごす時間を増やすことはほとんどの営業リーダーやコンサルタントが優先事項としている。だが残念ながら、成績不振の営業担当者が顧客との時間をただ増やしても成果は上がらず、むしろマイナスとなりかねない。たとえばあなたが下手な売り込みを受けたとして、次回にその担当者と過ごす時間が倍増したらどうだろう。

 第2、第3の要因はそれほど自明ではないが、非常に重要だ。

 法人顧客はますます洗練されており、購買オプションについてかなりの知識を持って商談に臨んでくる。彼らが探し求めているのは、自分たちのニーズを理解でき、その問題や懸念に迅速かつ効果的に対処できる、信頼のおける人物だ。担当者がこの要請に十分に応えるには、専門知識を持った適切な人材を、適時適所に配置できる必要がある。同時に、社内で承認を取りつける術を知っていて、必要に応じて自社の経営陣と話ができなくてはならない。さらに、自分が担当する取引以外に自社が何を提供できるのかを、総合的に理解していることも条件になる。

 これらの点に関して、前述のB2Bソフトウェア会社を見てみよう。トップクラスの営業担当者たちは、四半期の始めを見込み客との面談に多く費やしていた。だが時が経過するにつれ、顧客と過ごす時間は次第に減少していき、その一方で社内ネットワークは拡大していった。

 成績不振の営業担当者たちも同様の傾向を示したが、その数値はトップクラスに比べ軒並み低かった。調査期間を通じて、顧客と過ごす時間が25%少なく、社内ネットワークは20%小規模で、経営幹部と接する時間も20%少なかった。

 これらの要因を測定するのは、たしかに難しい。だが我々は調査を何度も繰り返し、いずれも同様の結果を得ている。しかも我々の調査と類似した他の複数の調査も、このようなネットワークと行動指標が営業成績の予測にきわめて有効であることを証明している。

 幸いにも、これらの指標はアクションに結びつけられる。トップクラスの営業担当者たちは概して、自身の行動が他者とどう違うのかを認識していない。また成績不振の人たちは成績を上げたくても、そのやり方がわからない。そしてマネジャーは、部下とのコミュニケーションの多寡が営業成績に直接影響するということを、わかっていないかもしれない。

 ピープル・アナリティクスに基づく指標を活用すれば、企業は営業戦略に携わる組織全体をかなり透明化でき、社員、マネジャー、幹部の活動をより精密に測定できる。そしてより重要な点として、営業成果につながる活動を優先できるようになるのだ。


HBR.ORG原文:3 Behaviors That Drive Successful Salespeople August 20, 2014

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ライアン・フラー(Ryan Fuller)
ピープル・アナリティクスを通して企業を支援するボロメトリクス(VoloMetrix)の共同創設者兼CEO。高度なビジネス・アナリティクスの専門家として、20年近くにわたり企業の組織能力向上を支援してきた。元ベイン・アンド・カンパニーのマネジャー。