エンジニアのために
エンジニアによって設立された企業

 設立間もない頃からグーグルでは、全社中がマネジャーの価値に疑問を抱いていた。その不信感は、技術者至上主義の企業風土に起因する。同社のソフトウエア・エンジニアであるエリック・フラットの言葉を借りるならば、グーグルは「エンジニアのために、エンジニアによって設立された企業」なのだ。

 同社のエンジニアに限らず、ほとんどのエンジニアは上司とコミュニケーションを取ったり、他の社員の進捗状況を監督したりするよりも、設計やバグの修正に時間をかけたいと思っている。彼らは長年心の奥底で、マネジメントはプラスよりマイナスのほうが大きく、「本物の仕事」や目に見える目的があるタスクのじゃまをしていると考えていた。

 実際、設立から数年後は、創業者であるラリー・ペイジとサーゲイ・ブリンでさえ、はたしてグーグルにマネジャーは必要なのか疑問を抱いていた。彼らはアイデアの迅速な発展に向けて垣根を取り払い、大学院で味わったような平等な環境を再現するため、2002年にエンジニア担当のマネジャーを置くことを廃止し、完全にフラットな組織を試みた。しかし、この実験的な試みは、ほんの数カ月しか持たなかった。というのも、経費報告に関する質問や人間関係の軋轢など、瑣末なあれこれをペイジに直接持ちかける社員があまりに多くなり、2人が音を上げたのである。