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データの品質確保は50年前からの課題である
生産管理担当の前途有望な女性幹部が、重役たちの前で行う重要なプレゼンテーションの資料づくりをしていた。その際、市場シェアのデータのどこかがおかしいことに気づき、すぐに自分のアシスタントを呼んで、数字の確認を頼む。アシスタントはデータの検証に取り組み、市場調査部門から提供された資料に1カ所誤りがあることを突き止める。女性幹部は必要な箇所を訂正する。大失態は回避され、プレゼンテーションは非常にうまくいった。女性幹部はとても喜び、アシスタントの労を特別にねぎらった。彼女は「毎回数字をダブルチェックする方針にすべき」という結論を出すに至った。しかしだれも、市場調査部門にデータの誤りを伝えようと思いつかない。ましてや、市場調査部門と協力してミスの原因を探り、次は必ず、正しいデータを得られるようにしようなどとは考えもしない。
私はデータ管理の専門家として、これまで何十もの企業でこのような場面が繰り広げられるのを目にしてきた。通信分野の企業であれば、カスタマー・サービス部門が入力した顧客の住所に間違いがあり、それをメインテナンス部門が修正しなければならないという事態が起こりうる。金融サービス業なら、融資組成の際に借り手の詳細データに間違いがあり、リスク管理部門がこれに対応しなければならないケースがあるだろう。医療の世界では、臨床データが不十分なままでも、医者は患者の治療効果を高めるための努力をしなければならない。まさにデータの品質問題は、情報の種類を問わずあらゆる業界、あらゆる部門、あらゆるレベルにはびこっているのだ。
どの企業の社員でも、こうしたデータの誤りには定期的に出会うものだが、日常業務に追われているため、ほぼ例外なく前述の女性幹部と同じく、その場で何とかしたり、修正したりして済ませているのが実情だ。しかしその代償はあまりに大きい。