時間管理は個人だけの問題ではない

 ほとんどのプロフェッショナルが誤った方法で時間管理を行っている。ダイエットやエクササイズの計画を立てては挫折する人を、自己制御できない、自律性に欠けると見なすのと同様に、仕事が遅れる人々は個々に問題があると考えてしまう。その対策として、自己啓発のコーチと同じように、個人の習慣を問題視する時間管理の専門家は枚挙にいとまがない。彼らのアドバイスは、タスク・リストを改善する、eメールのチェック回数を減らす、仕事を先延ばしにしない、といったことだ。

 もちろん、私たちのだれもがもっと上手に時間を管理できるのだろう。しかし、つながりや協調性が重視される現代の職場において、真の問題は個人がいかに自分の時間を管理するかではない。いかに集団としての時間を管理するか、すなわち、いかに協力して仕事をやり遂げるかである。ここに生産性向上への本当のチャンスが隠れている。

 10年近く前になるが、私はちょっとしたイノベーションと思しきものを実施するために、ボストン コンサルタント グループ(BCG)のあるチームと共同で取り組み始めた。各メンバーを説き伏せて、週に1回、指定日の夜はオフィスを出て、完全に仕事から離れてもらうことにしたのだ。これは、長時間勤務と1日24時間・週7日のカルチャーで悪名高いこの業界で、クオリティ・オブ・ライフの向上を目指すものだった。初期のフィードバックが肯定的だったので、まずは4つのコンサルタント・チームにこの取り組みを拡大、次に10チームに導入した。