営業という職に負のイメージや苦手意識を持つ人がいる。しかし、営業こそがあらゆるビジネスを推進する原動力である。強引に売り込む者が勝ち、というような古い偏見を払しょくし、営業の真の価値を認識する方法とは?
大学でコミュニケーション学と修辞学を修めた新卒当時の私にとって、ビジネス界はきわめて複雑な世界に映った。自分に向いた職種が何なのかわからず、さまざまな選択肢を模索した。友人の多くからは営業職を勧められたが、私は懐疑的だった。キャリアの始まりを前に私が強く望んでいたのは、尊敬と信頼を得ることだったが、営業ではそれがかなわないと思ったのだ。加えて、何かを売るという行為に魅力を感じることができなかった。
やがて、当時「ビッグ6」と呼ばれた監査法人の1つでパートナーによる面接を受けた。彼は「社内で最も大切な資産である“人”を強化する仕事」について話してくれた。
私はこれぞ自分がやりたい仕事だと思い、尋ねた。「素晴らしいですね。それは何という職能ですか?」。返ってきた答えは「人材管理(ヒューマン・リソース・マネジメント)」だった。
当時22歳の私は、「何てクールな響きだ。肩書きに“マネジメント”という言葉まで入っている。“どこそこの営業員”に比べればずっといい」と思い、サンフランシスコに向かった。こうして、ビッグ6の一角を占める監査法人の人材管理アソシエイトとして働き始めた。
そして2年が経った頃、私はあることを悟った。きっかけは、自社のシニア・パートナーと監査アソシエイト、そして私でのビジネスランチだった。そのパートナーは我々2人を気に入り、とても優秀だと褒めてくれた。そしてこう続けた。「大きな違いは、(監査アソシエイトを指差し)キミは収益を生み出すが、(私を指差し)キミは間接費ということだ」。パートナーとアソシエイトは軽く笑ったが、私はオフィスに戻るやいなや新しい仕事を探し始めた。その日、はっきりと気づいたのだ。営業こそが営利企業の要である。収益を上げる原動力となるのは素晴らしいことであり、誇らしくさえあるのだと。
とはいえ、実のところ私は営業が怖かった。そのイメージや販売ノルマ、強引な売り込みなどに抵抗があったのだ。
営業をそんなふうに誤解しているのは、かつての私だけではない。その後の20年間で、私は2社の営業部門で取締役副社長を務めたが、その間に気づいたことがある。商品を売らねばならないにもかかわらず、多くの企業にはセールスという行為に対する何らかの抵抗感が存在しているのだ。皮肉にも、営業の文化を受け入れたがらない風潮は、営業チーム自体からしばしば生じる。営業担当者は、よくこんなことを口にする。「自分の仕事は売ることではなく、顧客の購買判断を助けることだ」「自分の仕事は営業というより、顧客にコンサルティングをすることだ」。そして、私のお気に入りはこれだ。「自分の仕事は営業ではなく、ビジネス開発だ」。営業に全キャリアを費やしてきたプロフェッショナルでさえ、営業という仕事――少なくとも営業のイメージ――を恐れているのだ。一体なぜだろう。