知り合いではない相手にいきなりメールを送ることを、「コールド・メール」という。経営幹部や著名人など「偉い人」に直接メールを送ることで、有益な成果につながることがある。しかし多くの人は、この行為を恐れているのではないだろうか。コールド・メール活用の秘訣を、著名ビジネスライターで起業家のピーター・シムズが紹介する。

 

 企業のCEOたちは、現場からの知見を強く欲している。だが実際に現場にいる人々はといえば――その立場が顧客であれ従業員であれ――企業の上層部に連絡することを躊躇しがちである。ただ1通のeメールを送信すればよいだけなのに。

 先日、私の友人がこの現象を体現していた。彼はセールスフォース・ドットコムで働く中間管理職で、非常に観察眼が鋭く頭の切れる人物である。自社について彼が豊富に持つ洞察と視点は、創業者兼CEOを務めるマーク・ベニオフにとって有益となるはずだ。私はベニオフの知り合いではないが、この情報をベニオフは喉から手が出るほど欲しがるものと確信している。よりよい意思決定を下すのに役立つからだ。

 私がこのことに気づいたのは、メドトロニックの元CEOであり現在はハーバード・ビジネススクールの教授であるビル・ジョージと『リーダーへの旅路』を共同執筆したからだ。我々がインタビューしたCEOたちの多くは、自社の従業員と顧客が何を望んでいるのかをもっと把握したがっていた。CEOという職務は意外に隔絶されているのだと、彼らは繰り返し語った。だが、私が先の友人に「ベニオフにメールしてみたらどうか」と言うと、彼はやんわりと断った。組織の階層に波風を立てたくないというのだ。

 この友人がなぜためらうのか、私には理解できない。そもそも私がたまさか本を書くようになったのも、私のいたスタンフォード大学ビジネススクールで講演したビル・ジョージと軽く握手を交わしただけで、その後私から「コールド・メール」を送ったからなのだ。(訳注:コールド・メールとは、知り合いではない相手や交流のない相手に直接メールを送ること。)

 GEのエネルギッシュなCMO(最高マーケティング責任者)兼シニア・バイス・プレジデント、ベス・コムストックにも私はコールド・メールを送った。出版されたばかりの拙著『小さく賭けろ!』を送付するためだ。彼女はすぐに返事をくれ、献本先の住所を教えてくれた。やがて、私は彼女の勧めでGEの小人数のイノベーション諮問委員会のメンバーとなった。いまや我々は友人どうしだ。すべては、私がGEの他のメールアドレスを基に彼女のアドレスを当て推量してメールを送ったことから始まったのだ。