ひとりで考えること、人から刺激を受けること
残念ながら実態は、人から刺激を受ける場に軍配が上がります。これは仕方のないことでしょう。ひとりで集中して考える時間と場所は、個人でもつくりやすいからです。
以前私も会社が集中できない環境であることを嘆いていましたが、いまは割り切っています。会社は人と交わる場で、集中したければ自分で場所と時間をつくり出すべし、と。そしていくつかのカフェや契約しているライブラリーを「秘密基地」としています。
とはいえ、このひとりで考える場所としてオフィスが適さない不満は欧米でも同じようで、弊誌でもそのジレンマが紹介されています。
それでもオフィスが交流の場として重視すべきなのは、むしろネットの時代だからでしょう。いまやいつでも誰とでもつながる環境ができあがりました。電話会議を使えば時差もいとわず質の高いコミュニケーションが取れます。だからこそ、同じ時間、同じ場所で人と過ごす機会のコストは高くなりますし、その稀少性もますます高まっています。リアルな人との対面は言葉以上の意思疎通が可能ですし、ライブなインタラクションからお互いのアイデアの総和以上のアイデアが生まれることがあります。このような効果を期待してオフィスは進化していくことになります。
次なる課題は物理的な場所としての機能とともに、時間の概念です。素晴らしい場所も、そこで過ごす時間の濃さで効果はまったく違います。オフィスで同じ会社の人同士が、どのようなインタラクションの時間を過ごすか、オフィスの生産性はそこにかかっています。(編集長・岩佐文夫)